2019 Fiscal Year Research-status Report
複合オルガノイドによるヒト脳領域間ネットワークの形成
Project/Area Number |
19K22983
|
Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
六車 恵子 関西医科大学, 医学部, 教授 (30209978)
|
Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
|
Keywords | 神経発生 / 神経ネットワーク / 複合型脳オルガノイド / iPS細胞 / イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
神経科学の目標のひとつは、ヒトの脳の発生・構造・機能を科学的に理解し、その知見を神経精神疾患の克服に活用することにある。本研究はヒトiPS細胞から脳組織を自己組織的に分化誘導するオルガノイド技術を革新し、脳の領域間に形成される神経ネットワークを培養下で構築することにより、目標の到達に挑戦する。既存技術の限界を突破し、異なる脳領域間組織を共培養する複合型オルガノイドの作製と、非神経細胞の混和による複雑系脳オルガノイドの作製により、解剖学的・機能的神経回路網を再現する。これまで技術的・倫理的に困難であったヒト脳に関する実証研究を行うための新たなツールを開発し、ヒト脳のin vitro研究を自由に使える環境作りを目指す。本年度は、(1)脳オルガノイドの成熟化として、小脳組織と網膜組織の成熟化に取り組み、既報技術に比べ肥厚した組織構築を再現することに成功した。(2)オルガノイドの共培養による脳領域間神経ネットワークの形成として、大脳小脳連関ループの形成に取組み、2領域間の回路形成が可能であることを確認した。実際の生体においては中継核領域が存在するため、視床および前小脳核の分化誘導を実施し共培養を検討している。(3)神経ネットワーク形成の評価解析として、iPS細胞への細胞種特異的なプロモーターでの特定細胞種標識あるいはランダムな多色蛍光標識を行った。機能解析はカルシウムイメージングにより実施した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題において用いるiPS細胞はすでに樹立済みであったこと、脳オルガノイドの作製に係る基本技術も開発済みであったことから、共培養系の立ち上げが比較的順調に進んだ。その機能解析、細胞標識体の作成なども、概ね順調に進んでいるため。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究計画には開発する神経ネットワーク形成を複数掲げている。本年度は研究対象として大脳小脳連関ループに焦点をあてたが、中継核のさらなる成熟化が欠かせない。その他の神経回路形成については病態との関係が深く、良質な共培養系を開発し、疾患研究への展開も視野に入れたい。
|
Causes of Carryover |
初年度の研究には、既報の細胞培養技術の微細な改良と一過性の細胞標識により研究を進めたため、予想以上に経費を抑えることができた。次年度は、初年度に開発した共培養系を用い、画像取得と定量解析が主となるため、そのための経費が必要となる。また、ゲノム編集技術を用いた標識体iPS細胞株を作製するため、分子生物学研究試薬や細胞培養試薬・培養基材に用いる。
|