2019 Fiscal Year Research-status Report
超高時間分解能タイムオブフライトPET検出器のための光検出法の研究
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19K22987
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Research Institution | National Institutes for Quantum and Radiological Science and Technology |
Principal Investigator |
錦戸 文彦 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 先進核医学基盤研究部, 主任研究員(任常) (60367117)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
人見 啓太朗 東北大学, 工学研究科, 准教授 (60382660)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | TOF-PET / チェレンコフ光 / PET検出器 |
Outline of Annual Research Achievements |
Positron emission tomography (PET)の画質を向上させるための手法の一つにタイムオブフライトPET(TOF-PET)がある。TOF-PETでは、1対の消滅放射線の検出時間差を計測することでその直線上の一部(検出器の時間分解能に依存)に発生位置を限定することが可能となり、実質的な感度が向上することが知られている。一方で、一般的なPET検出器で用いられているシンチレーション方式による時間分解能の向上には限界が示唆されており、更に性能を向上するためには新しい手法の導入が必要となる。そこで本研究では、シンチレーション過程よりも高速な発光であるチェレンコフ光を用いることで、現存するTOF-PET検出器を超える時間分解能(位置限定能)を持つPET用検出器を実現を目指す。 当該年度は、チェレンコフ光を用いたTOF-PET検出器の実現のための基礎実験として、単一の結晶と光センサを用いた検出器を試作し、チェレンコフ光を用いたTOF測定の実証実験を行った。具体的には(LYSOシンチレータ+SiPM)と(臭化タリウム+SiPM)の2つのシングルチャネル検出器を用いてTOF測定を行った。各検出器からの出力をアンプで増幅した後、デジタルオシロスコープを用いて波形を記録し、ソフトウェア上で同時計数を行い飛行時間差を決定することで、飛行時間差スペクトルを得ることに成功した。チェレンコフ光はシンチレーション光と比較すると1000倍程度発光量が低いため、信号が検出・同時計数が可能であるかが課題の一つであったが、実験的に可能であることが証明できており有意義な結論が得られたといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の研究目標である「単一の光センサを用いた試作検出器を用いた基礎研究を行いその実現可能性を実証する」ことに成功した。検出器に使用した臭化タリウムはシンチレーション光を発生しないため、間違いなく目的であるチェレンコフ光を検出していると考えられる。加えてこの結果をシミュレーションソフトに組み込みことで、シミュレーションソフトの精度を向上することが期待される。 これらの結果が得られたことで、次年度の目標である更に高い時間分解能を持つTOF-PET検出器の研究・開発に進むことが可能となる。 これらの理由により進捗状況は順調であると結論付けた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は現在までに得られた結果を基に検出器の性能の向上のための研究開発を進め、現在までに実用化されているTOF-PET検出器を超える時間分解能を持つTOF-PET検出器の実現を目指す。現状では信号の検出には成功しているものの時間分解能は現状のPET検出器を超えてはいないため、検出器を構成する素子(結晶・光センサ等)の性能改善やデータ処理法の改良を行うことで時間分解能の向上を目指す。また、時間分解能だけでなく、PET検出器に必要なエネルギー分解能や空間分解能についても行っていく予定である。
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Causes of Carryover |
本研究の要となる光センサであるSiPMは年々その性能が向上している。特にチェレンコフ光測定に適する短波長用のSiPMは最近実用化されたばかりであり、なるべく購入時期を遅くしたほうがより良い素子が手に入ると考えられる。初年度の研究では十分の結果を得ることができており、更に高い性能を得るためにはなるべく新しい素子を購入することが望ましいとの判断により、次年度に購入を行うこととした。
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