2020 Fiscal Year Annual Research Report
中世期スーフィズム思想史理解への試み―イラン・スーフィズムに着目して―
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19K22996
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
井上 貴恵 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 助教 (70845255)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | スーフィズム / イスラム / 神秘主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の最終目標は、9世紀から12世紀頃にイランで発展したスーフィズム(イスラム神秘主義)思想と、13世紀以降主流となったスーフィズム思想潮流との間隙を埋めることで、9世紀から15世紀頃までのスーフィズム史を一連の思想史として捉えることである。 特に今年度はコロナの影響もあり、現地での資料収集活動が行えなかったため、現状において使用できる資料を用いての文献研究を中心に研究を行った。 本研究は本研究は①ルーズビハーンとイブン・アラビー思想の連関を十全に指摘すべく、両思想の近似について存在論的観点から更に検討を加えること、またイブン・アラビー以降のイブン・アラビー学派の思想とルーズビハーン思想との連関に関しても視野に入れ、②イラン・スーフィズムがイブン・アラビー学派へ与えた影響を明らかにすることで論を補強し、更に③教団の始祖とされたスーフィー聖者、教団の運営者、教団という3者の連関を思想面から検討することで、教団研究とスーフィズム思想研究をスーフィズム史として統合する端緒を得るという3点を研究目的とするものである。 今年度は特に②、及び③に着目した。②に関してはルーズビハーン以外の「イラン的」と目されたスーフィーのうち、イブン・アラビー思想との関わりに関し重要と考えられる文献として、アッタールやルーミーの著作を精読した。③に関してはメウレヴィー教団の教団教義とルーミー思想との関係性についてスルタン・ワラドの著作を通し検討を行った。特に今年度の③の研究結果として、従来のスーフィズム思想が教団の教義に合わせた形で整理されていった過程が明らかとなった。教団員に対する理解のしやすさのためにスーフィズム思想が画一化されていく様子に関し、現在論文として研究成果の取りまとめを行っている。
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Research Products
(2 results)