2022 Fiscal Year Annual Research Report
Study of Iwasa Matabei's Works and Biography
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19K23003
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
筒井 忠仁 京都大学, 文学研究科, 准教授 (20851322)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 岩佐又兵衛 / 誓願寺門前図屏風 / 舟木本洛中洛外図屏風 / 松平忠直 / 古浄瑠璃絵巻 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの岩佐又兵衛研究は、彼の作品を、彼自身の生い立ちから精神分析学的に読み解くものと、彼の有力なパトロンである松平忠直(一五九五~一六五〇)の趣味趣向の反映として読み解くものとが主流であった。近年は、それらを踏まえて又兵衛の作品及び画家像を「奇想」という概念で規定するのが一般的である。 絵画作品を注文主の趣味の反映と見ることも、画家の生い立ちから作品を解釈することも間違いではない。しかし、その前提となる生い立ちや趣味が歴史的な事実でない場合、その作品理解は、想像の域を出ないものとなる。実際、これまで語られてきた又兵衛の生い立ちや注文主忠直の趣味とされてきたものは、ほとんどが伝承に過ぎず、信頼できる史料に基づいたものは少ない。また、仮にそれらが検討に値する事実であったとしても、それらを実際の作品と短絡的に結びつけることはできない。そうした方法論を離れ、作品の上に表現された多様な要素を検証し、先入観を排して作品を眺めたなら、これまでとは違った作品理解ができるのではないか、そのように考えたことが私の研究の出発点である。 このような観点に基づき、まず私は、又兵衛及び忠直に関する伝承を精査するとともに、明治以降の研究史を丹念にたどり、伝承と史料的な事実を慎重に区別するよう努めた。次に、個々の作品のモチーフを観察し、そこに込められた作者の意図を分析し、作家の生い立ちとは別の制作背景を読み解くことを試みた。さらに、様式の分析から作品の制作年代を見直し、時代の動向と作品とを結びつける作業を行った。こうした作業により、これまでとは異なる作品理解を提示するとともに、今後の議論の前提となる様々な客観的事実を指摘したことが私の研究の成果である。
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Research Products
(2 results)