2021 Fiscal Year Annual Research Report
古代中国兵学思想史における天文占の理論構造について―新出土文献を活用して
Project/Area Number |
19K23004
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
椛島 雅弘 大阪大学, 文学研究科, 招へい研究員 (90823807)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2022-03-31
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Keywords | 中国兵学思想史 / 術数 / 敦煌文献 / 孤虚 / 兵陰陽 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の成果として、①孤虚占の研究と②兵陰陽の研究が挙げられる。 ①前年度に行った孤虚占の研究をさらに進めた。結果、以下のことが明らかとなった。孤虚占は、元々旬を基準として、旬ごとの孤虚を八方位から定めるといった占術であった。しかし後世、占う時間の単位が増えていき、また方位も八から十二へ変化し、太歳・十二月将・北斗七星・十六神といった要素を付加していきながら発展した。そしてこの動きは、孤虚占と類似点の多い三種の式占が徐々に支持されるようになったことと密接な関わりを持っていた。 孤虚占は、戦国時代から唐宋にかけて、主要な占術の一つであったが、その後廃れていった。一方、式占は徐々に占術としての地位を確立していった。以上により、孤虚占の変化は、三種の式占に対抗するためのものだったことが予想される。 ②天文占の理論を明らかにする上で重要な「兵陰陽」という概念について、厳密な定義付けと歴史的展開について検討した。まず、『漢書』において登場する「兵陰陽」という概念は、「①軍事に関係していること」、「②術数思想(具体的には、三才思想を根拠としつつ、陰陽・五行・気・物類相感など、中国独特の自然観)に基づき未来を予測していること」、「③問答形式か理論化された内容を含むこと」と定義付けることができた。一方、「兵陰陽」とは別に、具体的で技術的操作を主に説く「兵数術」も存在していることも注目された。 また、『漢書』芸文志以降、「兵陰陽」という概念はある程度継承されたものの、厳密に受け継がれることはなかった。これは、そもそも中国兵学思想史上において、「兵陰陽」がその理論性・抽象性から継承されづらい側面を持つ一方、「兵数術」は具体的で後世の兵書・占書に継承されやすい側面を持っていることが原因であった。
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