2022 Fiscal Year Annual Research Report
戦後前衛書の他分野への展開:美術制度の周縁での受容
Project/Area Number |
19K23010
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
向井 晃子 神戸大学, 国際文化学研究科, 協力研究員 (70848465)
|
Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2023-03-31
|
Keywords | 前衛書 / 周縁 / 美術制度 / 日本近代美術 / 伝統芸術 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、戦後前衛書の多様な展開とそれを可能にした支援者に目を向け、美術制度に支えられなかった芸術表現とそれが可能になった状況を検討して、欧米とは異なる歴史と文化がある日本の美術史の特徴を、制度外から逆照射する形で浮き彫りにすることである。本研究の 核心には、明治期の人為的な「美術」の線引き から漏れた書という伝統芸術分野に注目し、戦後になされたその新たな展開を検討することで、 「日本美術」や「西洋美術」、「伝統芸術」や「現代美術」と いった従来の分類では収まりきらない学際的な芸術表現を美術史の視点から問い直し、現在行われている戦後日本美術の研究をより多面的、重層的に進展させる という狙いがあり、前衛書が周縁で支えられた状況を明らかにするために、地方での調査を計画した。 今年度は、北海道の滝川市美術自然史館での作品調査と、兵庫県三木市の堀光美術館、京都市の源鳳院での展覧会調査、複数回の資料調査を行なった。滝川市美術自然史館では調査先の協力により、300点を越える上田桑鳩の収蔵作品の台帳を閲覧し、収蔵庫の作品を指定して出庫いただく形で、彩書と呼ばれる有彩色の書の制作を中心に、多数の作品調査を実施した。堀光美術館での上田桑鳩展でも彩書作品が展示されており、それらの調査を行うことができた。源鳳院で開催された篠田桃紅の展覧会では、着物作品の調査を実施した。研究成果を論文にまとめ、学術誌に投稿して掲載された。研究期間全体を通じては、上田桑鳩、森田子龍、篠田桃紅についての展覧会調査7回、作品調査3回を実施、それを補完する聞き取り調査と資料調査、関連する展覧会調査等を精力的に行った。上記で言及した単著と論考の他に、研究期間中の学会発表で他分野の研究者と議論を行い、非常に有意義な結果となった。また、研究期間を通じての研究成果を単著の一部として執筆し、三元社より出版した。
|
Research Products
(2 results)