2019 Fiscal Year Research-status Report
The relationship between Mark Rothko's composition and Minimal Art
Project/Area Number |
19K23011
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
芦田 彩葵 神戸大学, 人文学研究科, 人文学研究科研究員 (10844996)
|
Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
|
Keywords | マーク・ロスコ / 抽象表現主義 / ミニマル・アート |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、抽象表現主義の画家マーク・ロスコの構図とスケール性に着目し、ロスコ作品の独自性について検証した上で、ミニマル・アートとの受容関係を考察するものである。具体的には、(1)これまで十分に論じられてこなかった画面構成や表面性、またスケール性に着目し、 クリフォード・スティルやバーネット・ニューマンなど同時代の抽象表現主義の画家たちの作品と比較検証し、その独自性について考察すること、(2)その独自性によって、ミニマル・アートを中心に抽象表現主義以後の絵画にどのような影響を与えたのか、新たな視点からその解明を目指すことを目的としている。 上記の考察を行うため、本年度はロスコを中心とする抽象表現主義およびミニマル・アートの作品調査と資料収集を行った。夏にウィーン美術史美術館で開催されたマーク・ロスコ展において、マルチフォーム絵画とよばれる構図の形成過程の作品をまとめて調査することができた。また壁面や照明などロスコが生前指示した条件を尊重した展示室では、作品と観賞者をめぐる空間性について考察した。冬には、ニューヨーク州のDIAビーコンでのロバート・ライマン、アグネス・マーティンらの作品調査、ニューヨーク近代美術館図書館でのミニマル・アート関連の文献調査を行った。またニューヨークのメトロポリタン美術館で開催されていたEpic Abstraction展を視察し、ロスコをはじめ抽象表現主義の作品調査を行い、鑑賞者に与えるスケール感や作品の表面性の考察を行った。加えてミニマル・アートの代表的画家である桑山忠明氏に面会し、抽象表現主義の集大成といわれる1959年の「16人のアメリカ人」展に関する当時の受け止め方や、ミニマル・アートが隆盛する1960年代のアメリカのアートシーンについてインタヴューを行い、ミニマル・アートの画家たちが抽象表現主義の画家たちに向けていた眼差しを考察した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
神戸市の国際アートプロジェクト「TRANS- 」において、キュレーターとして、出品作家のグレゴール・シュナイダーによる空間作品の展示に携わる機会を得た。作品と観賞者をめぐる空間性は、作品のスケール性の問題ともつながり、ロスコ作品の考察においても重要な要素となる。そのため空間性に関する考察を深めるべく、作家の展示作業に立ち会うなかで、作品のもつスケール性がいかに鑑賞者に影響を与えるかを考察し、作品の空間性と場所性を焦点に展覧会カタログの論文執筆を行った。上記の理由により、調査研究の方向性を広げることになったため、もともと予定していた調査資料の分析の一部を翌年に行うことになった。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究課題のエフォート数値を上げることによって、本年度に予定していた調査研究の遅れを取り戻し、予定の進捗度合に到達する。
|
Causes of Carryover |
当該年度に購入予定だったパソコンやカメラなどの購入を次年度に、また年度末に予定していた調査を新型コロナウイルスの影響により延期したため、次年度使用額が発生している。
|