2021 Fiscal Year Research-status Report
The relationship between Mark Rothko's composition and Minimal Art
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19K23011
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
芦田 彩葵 神戸大学, 人文学研究科, 人文学研究科研究員 (10844996)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | マーク・ロスコ / 抽象表現主義 / ミニマル・アート / アグネス・マーティン / グリッド絵画 / 戦後アメリカ美術 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、抽象表現主義の画家マーク・ロスコの構図とスケールに着目し、ロスコ作品の独自性について検証した上で、ミニマル・アートとの受容関係を考察するものである。上記の考察を行うため、ミニマル・アートの代表的作家で理論においても先導的役割を果たしたドナルド・ジャッドやロバート・モリスの著作について分析すると同時に、作品のスケールによって鑑賞体験が左右されるインスタレーション作品に関する検証を行った。また、抽象表現主義の作品と作品の展示空間との関係について調査研究した。 昨年度より継続して、抽象表現主義とミニマル・アートをつなぐ画家としてアグネス・マーティンの作品に関する調査研究、および1960年代のロスコの活動について検証を行い、論文として発表した。具体的には、ロスコが求めた触知性と造形性がマーティンに継承されていること、ロスコの色彩や筆触が際立ったことに加え、61年の個展開催後に新作の発表を控えたことにより、構図の観点からロスコとポスト抽象表現主義との関係が見過ごされてきたことを提示した。最後に、抽象表現主義にもミニマル・アートにも回収されない60年代の絵画作品の多様さと複雑な状況をマーティンの作品によって浮き彫りにした。 「場所」と「移動」を焦点に、抽象表現主義をはじめとする1950―60年代の国際的な美術動向の背景を検証し、抽象表現主義以後の美術の展開について考察を行った(尾崎信一郎氏へのインタヴュー「場所と批評」『美術評論家連盟会報』2022年1月22日公開)。 その他、アメリカ・ニューメキシコでの原体験をもとに作品制作をする現代美術家・林智子の展覧会を企画した。林の作品を検証するなかで、アメリカの風景がロスコや抽象表現主義の作家たちに与えた影響についても分析し、原風景における心象によって生じるスケール、広大さと親密さの表現について展覧会カタログに論文として発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
ロスコ財団の作品資料が寄贈されたワシントンのナショナル・ギャラリー、作家たちのインタヴュー等を収蔵するワシントンのスミソニアン研究所アメリカ美術アーカイブや各作家のアーカイブがあるアメリカ各地で作品および資料調査を行う計画であった。しかし、昨年度に続き、本年度も新型コロナウイルスの世界的感染状況が好転せず、渡航を中止せざるをえなくなり、進捗に大きな遅れが生じた。ただし、そのような状況下においても可能な限り調査研究を進捗させるため、国内の美術館図書室での文献調査を行い、海外のアーカイヴについてはオンラインにおいても閲覧できるデータベースにアクセスした。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ禍による渡航条件が緩和されてきたので、感染状況の推移を見つつ、今後は海外調査を積極的に行い、作品および文献調査を行う。また本研究課題のエフォート数値を上げることによって、当該年度に予定していた調査研究の遅れを取り戻し、予定の進捗度合に到達する。
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Causes of Carryover |
本年度に予定していた調査を新型コロナウイルスの影響により延期したため、次年度使用額が発生している。
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