2020 Fiscal Year Annual Research Report
サンスクリット語源学から見渡す世界の構造―火神、雷神、太陽神の生態
Project/Area Number |
19K23012
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
川村 悠人 広島大学, 人間社会科学研究科(文), 准教授 (50739068)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 古代インド / ヴェーダ語 / サンスクリット語 / 語源学 / 通俗語源 / 神学 / 火神 / ヤースカ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、紀元前5世紀から4世紀に活躍した古代インドの言語学者ヤースカが、サンスクリット語文献『語源学』にて展開する神学を解明しようとするものである。具体的には、彼の神学体系において主要な位置を占める地上の火神(祭火アグニ)、中空の火神(雷光インドラ)、天の火神(太陽アーディティヤ)をめぐる彼の神学的議論の内実を明るみに出そうとするものである。いかなる文化体系においても何かしら神的な存在をめぐる思索が連綿となされてきたであろうことを考えれば、ある古代の思想家が神々のあり方や役割をどのようにとらえたかを明らかにすることは、文献学、神話学、宗教学、歴史学、民俗学、文化人類学といった広く人文学領域の研究にとって、多種多様な文化体系の根幹を理解する上で新たな資料と知見を提供するものである。 2020年度は中心的資料となる『語源学』第七章全体の邦訳と英訳を完成させ、精査した。そして、この英訳に同章の詳細な分析を交えた英語論文を一流の海外学術雑誌として知られるJournal of the Royal Asiatic Societyに発表し(約40頁)、天空地の火神それぞれのヤースカ神学における性格と位置づけを明らかにした。本論文では、天空地を統べる以上の三大火神をさらに統括する三世界の唯一神についても考察を加えている。ヤースカは、これら三火神が帰一する唯一の存在を想定し、それをアートマン(宇宙我)と呼ぶ。そしてこのアートマンとは、彼によれば、地上の火神アグニに他ならない。中空の雷光インドラも天の太陽アーディティヤも、一切の神々は究極的にはこの地上の火神アグニが状況に合わせてとっている姿である。 以上の成果に加えて、ヤースカの語源学と神学の実態を明らかにする学術書(約200頁)を2021年度中に出版予定であり、本研究の全成果はそこに集約されていることを付記しておきたい。
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Research Products
(7 results)