2019 Fiscal Year Research-status Report
中国と日本における漢代象数易の展開―『周易命期略秘伝』を中心として
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19K23013
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
藤田 衛 広島大学, 文学研究科, 助教 (20850150)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 象数易 / 易経 / 日中交流 |
Outline of Annual Research Achievements |
『周易命期略秘伝』の資料収集を行った。京都大学図書館・慶応義塾大学図書館・早稲田大学図書館・広島大学図書館・関西大学図書館所蔵の『周易命期略秘伝』を調査し、資料の収集を図った。その結果、現在、伝存する『周易命期略秘伝』は、単行本と『百衲襖』所収本に大きく分類できることが分かった。また蓬左文庫に所蔵されている『周易大命期経』は、『周易命期略秘伝』の内容と一致する部分がみられるが、また別の書物であることが判明した。国立国会図書館にも『周易大命期経』が蔵されており、これはその和刻本であった。以上の調査結果は、京都大学人文学研究所で行われた国際シンポジウム『緯書と漢代経書学』にて発表を行った。 『周易命期略秘伝』の内容の検討を行った。『周易命期略秘伝』に引用されている漢籍から、唐初の李淳風および成玄英の著とされる『周易命期経』を中核とすることが判明した。附されている注釈は、中国の書籍によるものが大半であるが、日本で書かれた注も存在していた。『周易命期略秘伝』は、日本人が『周易命期経』を基礎として様々な漢籍からその易術の要点をまとめた書だと言うことができる。 『周易命期略秘伝』には、主に漢代象数易とりわけ『易緯』に由来する易術が記載されていた。それら易術の構造を検討した。大方の易術の仕組みは解明した。『周易命期略秘伝』には、平安時代における易術を利用した勘文が記録されており、その内容を検討した。平安時代の十世紀から十一世紀には、象数易を利用した易術が理解され、実際に運用されていることが明らかとなった。以上の研究成果は、ほどなく公表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
『周易命期略秘伝』に関わる書物の調査・収集は、五点ほど調査できていないが、大方は複写し収集した。『周易命期略秘伝』の形成過程および易術の構造については見通しがついており、論文としてまとめるだけとなっている。総合的に判断して、本研究課題は、順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度では調査できなかった残りの『周易命期略秘伝』に関わる書物の調査・収集を行う。本年度は、漢代象数易を含め、『周易命期略秘伝』の形成過程および易術の構造についての論文執筆に注力する予定である。
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