2022 Fiscal Year Research-status Report
現代の情動の哲学の知見を踏まえた、合理性の向上による道徳エンハンスメントの可能性
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19K23017
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Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
林 禅之 埼玉医科大学, 医学部, 助教 (90846867)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2024-03-31
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Keywords | 道徳エンハンスメント / 痛み / 拡張した心 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引き続き、道徳エンハンスメントについて、主に2つの方面から研究を進めた。第一に、心は頭蓋を超えた事物によっても実現されるという「拡張した心」の議論を参照しながら、道徳エンハンスメントを再考しようと試みた。「拡張した心」のアイデアをエンハンスメントと結びつけようとする哲学者Neil Levyの議論や、それに関連する文献を検討しつつある。第二に、道徳エンハンスメントが人間のアイデンティティに及ぼす影響を引き続き探った。自己の真正性についての文献を整理検討し、道徳エンハンスメントがもたらす影響の含意を探った。 また、痛みについての哲学文献のサーヴェイも継続している。次年度には、これらを成果として発表できるよう、うまく業務の調整をしつつ引き続き研究を進めていく。 今年度までの研究でよくわかったのが、道徳エンハンスメントという研究トピックは、たんに応用倫理学の一トピックなのではなく、そもそも道徳とは何かという問いを背景に持つ、非常に大きな問題だということだ。上述の路線は良い切り口だと思われるが、成果に結びついていないので、引き続き工夫しながら研究を進めたいと思う。 具体的な成果はまだ出ていないが、成果報告のワークショップ開催のための打ち合わせを3月に行なった。今の所、京都大学で9月に開催予定である。発表者の2名(京都大学、名古屋大学)と連絡を取り合い、次は6月に事前打ち合わせを行うことになっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
延長を重ね、かなり長期間にわたって研究を続けているが、残念ながら全体的に思うような研究成果は出ていない。投稿論文については定期的な検討会を行なっており、進展が見られるが、アクセプトまでは至っていない。次年度、投稿先を柔軟に考えながら、引き続き成果を出せるように努力していく。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、同じ路線で研究を進める。研究計画にはこれ以上大きな変更はなく、成果を出せるようにできる限りのペースで進めていく。次年度の9月にワークショップを開催する。
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Causes of Carryover |
当初予定していた旅費などが未使用なため。次年度は、ワークショップのための旅費に充当する予定である。
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