2019 Fiscal Year Research-status Report
19世紀フランスにおける大聖堂の表象研究―旅のテクストとイメージの考察を中心に
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19K23022
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
泉 美知子 中央大学, 文学部, 准教授 (00742983)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 大聖堂 / ジョン・ラスキン / アミアン / ヴィオレ=ル=デュック / ゴシック建築 / 修復 / 旅行 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「大聖堂」を発見する「旅」をテーマに、19世紀フランスで刊行された図版付出版物を取り上げ、文字資料からは地誌学的・考古学的好奇心を解読し、イメージ資料からは審美的関心を読み取る。そうした分析を通して、「大聖堂」をめぐる知性と感性に関わるコンテクストを浮き彫りにし、過去の建築物が近代においていかに受容されたのかについて、美術史、文学、歴史を視野に入れた横断的な研究を目指すものである。 2019年度の成果としては、2019年11月9-10日、名古屋大学で開催された国際シンポジウム「ラスキンとフランス」にて「ラスキンとアミアン大聖堂:発見、修復、旅行ガイド (Ruskin et la cathedrale d'Amiens : decouverte, restauration et guide touristique)」について発表を行った。この仏語での発表内容にさらに考察を加えた形で、2020年2月18日、立教大学の「マルセル・プルーストと大衆化の力学:小説の生成過程と受容過程をめぐる表象史研究」会において「19世紀ツーリズムの到来と文化遺産への眼差し:ラスキンのフランス旅行を中心に」という発表を行った。 英国の美術批評家ジョン・ラスキンの北フランス旅行を取り上げ、その旅が行われた時期とフランスの文化財保護政策の展開を照らし合わせたうえで、ラスキンが当時ヴィオレ=ル=デュックを中心にして実施された大規模修復事業を目の当たりにし、危機意識を表明していたことをその著作や論文をもとに明らかにした。こうしたラスキンの旅の状況を踏まえつつ、北フランスのゴシック大聖堂にどのような眼差しを注いでいたのか学問的・美学的観点から考察した。とりわけラスキンの眼差しがロマン主義的な性格を持ち合わせている点について、19世紀前半の大型出版物との比較を通じて検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究は2019年9月より開始された。2019年9月から2020年2月までの6か月のあいだ、資料収集、研究発表を行った。 2019年11月に国際シンポジウムで発表した内容は、2020年度前半期に論文として執筆し、論文集(仏語)の刊行は2021年に予定されている。 2020年5月16-17日、日仏会館で開催予定であった国際シンポジウムでの発表に向けて準備中であった。2020年3月には、発表準備のための資料調査を2週間かけてフランスにて行う予定であった。フランスでの調査旅行も、国際シンポジウムでの発表も、新型コロナの影響を受けて、計画は延期となっている。さらに、インターネットによるフランスからの資料取り寄せも控えている状態である。 したがって、研究を前進させるためのあらゆる手段が中断され、その再開はフランスにおける新型コロナの成り行き次第となる。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年5月に開催予定であった国際シンポジウムは2021年5月に延期された。国内でできる範囲の資料調査によって、発表準備を進める予定である。 幸いなことに、本研究にとって重要な原文資料を、国立西洋美術館が所蔵している。美術館の協力のもと、国内でできる限りの研究を進め、論文を執筆していきたい。 調査旅行やそれに伴う機材購入がまだ行われていない状況である。研究費の1年延長申請を検討している。
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Causes of Carryover |
2020年3月に予定していたフランスでの資料調査とそれに伴う機材購入が延期されたため。
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Research Products
(1 results)