2019 Fiscal Year Research-status Report
A Study of Self-Knowledge in Plato's Philosophy
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19K23024
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Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
三浦 太一 中部大学, 人文学部, 講師 (60847531)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 自己知 / プラトン / 古代ギリシア |
Outline of Annual Research Achievements |
プラトン哲学における自己知を研究するという目的にあたって、自己知の困難とその解決可能性を複数の対話篇にわたって探るという計画を立てた。今年度は自己知の困難を探ることに重点を置き、『イオン』と『カルミデス』の読解、研究を行った。 『イオン』に関しては、古代ギリシア社会で知識人として扱われていた詩人や吟唱詩人が、ただ狂気にとりつかれ自らの話す内容も理解せず、自分に対する認識をも欠いたものであり、かつ、それを受け取る聴衆の側も狂気の悪影響を受けているという問題を確認した。この主題について、本研究活動スタート支援採択前から研究を進め投稿をしていた論考を「狂気の伝達―プラトン『イオン』篇における詩人と吟誦詩人、そして聴衆―」として 『アリーナ』第22号, 中部大学編, 277-290頁で発表した。 また、自己知の問題を主要テーマとして含む『カルミデス』篇を詳細に分析するために、まず、その導入部分である箇所の分析を行った。そこでは、まず人間は病を治療する場合、例えば、目を治療する場合には頭を配慮しなければならないように、全体を治療しなければならないことが示唆される。それに加えて、人間において、身体が部分であり、魂が全体であるという、興味深いソクラテスの指摘がある。これは人間が自分自身の本体をいかに理解すべきかという問題を含んでいる。この点に関しての様々な論争を確認した上で、2020年2月に Holistic Medicine In Plato's Charmidesと題する口頭発表を、 14th London Ancient Science Conferenceにおいて行った。これは自己知にも通ずる、人間のあるべき自己認識、あるいは、自己への配慮の仕方を考察したものであり、さらには、『カルミデス』後半の自己知の分析を理解する上での準備となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は自己知の困難を明らかにするために、『イオン』、『カルミデス』、『ソクラテスの弁明』を分析することに重点を置いた。そのうち、『イオン』と『カルミデス』に関しては、論考発表と口頭発表に至ったが、『ソクラテスの弁明』に関しては、『イオン』に関する論考の中で、部分的な分析をするにとどまった。『カルミデス』に関しては、本対話篇後半部の自己知に焦点をおいた分析がさらに必要である。さらに、自己知の困難の解決可能性を示唆するものとして『パイドン』想起説に「自己発見」のテーマを読み取る論考を作成したが、本年度中の発表には至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度前半は『パイドロス』において自己知のテーマを読み取り、分析することに注力し、7月と9月に学会発表をする予定である。この考察の中には『ソクラテスの弁明』における「汝自身を知れ」という自己知を促す言葉の分析も含まれる。2020年度後半には、『カルミデス』後半部分の分析と『国家』、そして、『アルキビアデスI』における自己知の読み取りを進める。あわせて、すでに作成された『パイドン』想起説についての論考を発表することを目指す。
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