2020 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19K23026
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
櫻井 真文 同志社大学, 国際連携推進機構, 特別研究員 (20844096)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | フィヒテ倫理学 / 道徳感情 / 当為 / 選択意志 / 純粋意志 / 促し / 自己限定 / 道徳的使命 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の主要目的は、フィヒテ倫理学における道徳感情の体系的位置を精査することを通じて、前期フィヒテ倫理学の統合的解釈モデルを構築することである。2020年度は、イェーナ期(1800 年以前)フィヒテにおける道徳感情と義務概念の関係の究明を主題に掲げ、同時期のカントの道徳哲学との比較検討を軸として、解明を行った。本年度の研究の意義は、道徳感情と義務概念の双方が道徳的行為の成立条件であることを浮き彫りにすることで、フィヒテ倫理学が単なる無味乾燥の空論ではなく、現実的行為を方向づける「具体的倫理学」であることを明示する点にある。 具体的な研究の進め方としては、フィヒテの『新しい方法による知識学』(1798/99年)における「道徳的使命」の説明と、同時期の通俗的講演である『人間の使命』(1800年)を分析するという手法が採用された。研究成果に関しては、まず「『新しい方法による知識学』における純粋意志と促しの総合 」という表題の論文が、『日本フィヒテ研究』(28号)に公開された。また10月には、「Die Erste-Person-Perspektive in Fichtes Willenslehre gemaess der Wissenschaftslehre nova methodo (1798/99)」 という標題の研究発表を行った。これらの論文と研究発表では、あらゆる人間には理性を起源とする「べし」の感情が等しく備わっていること、その感情を具体的行為へと展開できるか否かはあくまで各人の自由に委ねられるべきものであること、が解明された。 本研究実績の重要性は、自己自身の――理性を起源とする――「自由意志」と、自己以外の――自己を超えた――他者から課せられる「使命」との総合可能性を、合理的熟慮と行為の決断を自ら引き受ける、人間の「選択意志」の内に指摘した点に認められるであろう。
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