2020 Fiscal Year Annual Research Report
ジャック・デリダを中心とした戦後フランスの哲学教師論の展開に関する研究
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19K23028
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
松田 智裕 立命館大学, 文学部, 研究員 (00844177)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 哲学教育 / 教師 / デリダ / 脱構築 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度となる本年度は、前年度に引き続き、デリダの哲学教師論の研究に取り組むとともに、GREPH以後の哲学教師論の展開を考察した。まず、デリダが「哲学を教える」という行為および「教師」の身分をいかなる視点から思考しているのかを考察した。その際に、彼が哲学教育を背後から規定する様々な権力機構(試験制度、審査委員会、省庁)に言及していることに着目した。彼によれば、「哲学を教えること」は単に哲学史の知識や論理的な思考法を教授するだけの営みではなく、試験の評価基準や審査委員会の方針によって内部から規定されている。そこで本研究では、『哲学への権利』(1990年)に収録された1970年代の論文や同時代の関連論考の研究に取り組み、デリダにおける哲学教師と権力の問いの関係性を考察した。それによって、デリダの教師論が授業における教師と学生の理想的な関係を直接問うものというより、「哲学を教えること」という営みを内的に規制している政治的な力と利害とその歴史を問題化する一種の権力論であることを示した。次に、ランシエールを中心にGREPH以後の哲学教師論の研究に取り組んだ。彼は『無知な教師』(1987年)のなかで、ジョゼフ・ジャコトを例にとりながら、教師の役割を学生が自らの知性を用いるように促す「解放」と考えるが、その過程で知性の不平等化をもたらすような公教育の権力を問題にする。これはデリダの教師論とも重なる視点であり、本研究では、「権力と教育」を軸にデリダとランシエールの双方を対比させつつ、哲学教師をめぐる彼らの思想的類縁性と差異の整理を行った。
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Research Products
(6 results)