2019 Fiscal Year Research-status Report
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19K23046
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Research Institution | Kobe City University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
橋本 貴子 神戸市外国語大学, 外国学研究所, 客員研究員 (00844416)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 唐代音韻史 / 梵漢対音 / 霞浦文書 / 対音資料 / 軽唇音化 / 非鼻音化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、唐代の音韻・音声変化の具体的な様相について対音資料を用いて解明することにある。 2019年度は、初唐期(618-712年)の対音資料における微母と日母の対応状況を検討し、それら声母の音価について考察を行った。 (1)微母について。これまでの梵漢対音研究によると、初唐期の梵漢対音ではSanskrit(以下Skt)のmは基本的に明母で音訳されており、微母字がmの音訳に用いられることはほとんど無い。よって、微母は明母から分化していた可能性がある。但し微母字のうち「文」と「勿」の二字のみは、例外的に複数の対音資料に現れ、外国語のmに対応する。それらの例は微母の鼻音的要素が十分に保存されていたことを示している。また微母はSktのvや中世イラン語のb等 の音訳にも用いられない。従って、まだ十分な摩擦音化および非鼻音化は生じていなかったと思われる。 (2)日母について。初唐期の梵漢対音において、日母は主にSktのpalatalのnに対応し、摩擦音化および非鼻音化の反映は見られない。一方、武后期頃の成立と目される霞浦文書中の漢訳マニ教文献の音訳讃歌では、日母字「而」に口偏を加えた字が中世イラン語のzhに対応している。これは日母の摩擦音化を反映している。 以上については、11月にお茶の水大学で行われた第69回日本中国語学会全国大会において口頭発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
微母と日母の音価に関する研究では進展が見られたが、研究の途中でそれを論じる前に軽唇音化についての本格的な議論を行うことが不可欠であるとの認識を得た。そこで微母と日母に関する論文の発表を一旦保留し、次年度に研究を予定していた軽唇音化についての研究計画を前倒しして行うことにした。そのため本来計画していたよりも研究成果の発表が遅れることとなったが、研究全体としては着実に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、昨年度の研究成果を論文として発表する。また、引き続き対音資料を活用して唐代の音韻・音声変化についての研究を進める予定である。
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Causes of Carryover |
若干ではあるが、当初の予想よりも出費が抑えられたため。 次年度の文献収集に使用する予定である。
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Research Products
(1 results)