2023 Fiscal Year Annual Research Report
アジア太平洋戦争における慰問雑誌の読者に関する総合的研究
Project/Area Number |
19K23050
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Research Institution | Meiji Gakuin University |
Principal Investigator |
中野 綾子 明治学院大学, 教養教育センター, 助教 (80764894)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2024-03-31
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Keywords | 日本文学 / メディア / 出版文化史 / 読書 / 慰問雑誌 / アジア太平洋戦争 / 改造社 / 戦線文庫 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、「将兵という読者」を実証的に明らかにし、東アジアにおける文学状況・読書行為の歴史のなかに位置づけることである。そのために、「将兵という読者」のために製作された慰問雑誌に関する調査・分析をおこなうこととしていた。研究内容は以下の通りであった。 1 慰問雑誌等の兵士用書物の流通に関する実証的調査 2 慰問雑誌の収集および製作状況の調査 3 将兵による慰問雑誌の執筆・受容および作品分析 本来ならば「1」の調査として、中国での兵士用図書の実地調査および国内における慰問雑誌の所蔵調査をおこなう予定であったが、新型コロナウイルス感染症の影響で調査が思うように実施できず、現状の資料および国内で可能な資料収集に切り替えることとなった。そのため、「2」「3」の研究調査を中心に実施した。とくに今年度は、「2」の慰問雑誌の資料調査として、海軍向け慰問雑誌である『戦線文庫』の収集に大きな進捗があった。さらに、地方の慰問雑誌についても収集が進み、これらについては今後復刻を進めていくこととなった。また、これらの収集雑誌を利用し、最終年度として、『戦線文庫』に掲載された連載作品の分析をおこない、学会にてその成果の学会発表をおこなった。さらに、大阪、京都、埼玉、横浜、愛知、名古屋に加え、岩手や堺、北海道などにて刊行された地方版の慰問雑誌の刊行経緯について分析を行い、その成果について発表をおこなった。さらに、これら慰問雑誌との軍事援護との関連性が強く現れていることを鑑みて、慰問雑誌にも多く特集が組まれた小川真吉「隻手に生きる」という作品が、戦時下においていかに文化として流通したのか検討をおこない、その成果を発表した。
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