2021 Fiscal Year Research-status Report
清代における「薛家将」故事の発展と拡大に関する研究
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19K23053
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
柴崎 公美子 早稲田大学, 文学学術院, その他(招聘研究員) (70844140)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 清代 / 中国通俗文芸 / 宮廷演劇 / 家将小説 / 羅家将 / 薛家将 / 家将もの |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は「羅家将」や「薛家将」に関する戯曲や民間芸能の状況を整理し、地方ごとの特色を抽出しようと試みた。そうした作業の中で、「羅家将」および「薛家将」の武将夫婦を描く物語に着目した。「羅家将」および「薛家将」で描かれる武将の夫婦関係が、いわゆる「楊家将演義」のような、明代までに成立した家将小説で描かれる夫婦関係と様相を異にしているように思えたからである。「楊家将」物語では宗族に新しい戦力をもたらし、守護女神のような存在となる妻たちが描かれるのに対し、「羅家将」や「薛家将」の物語においては、夫あるいは情人である武将との関係性に困難や障害が生じる妻や女傑が現れる。とりわけ有名なのが夫である薛丁山から3度も離婚されるエピソード「三休樊梨花」で有名な樊梨花である。夫婦関係に困難を抱える女傑妻の代表格とも言える彼女にフォーカスし、民間芸能、清朝宮廷演劇、薛家将小説における彼女の描かれ方を、とりわけ夫・薛丁山とその周囲の人間からどのように扱われているかという点について検討し、「羅家将」や「薛家将」の物語で見られる離縁どころか殺害まで発生する混沌とした夫婦関係について、「家」や「宗族」ではなく男女個人間の思惑をクローズアップしようとする思想が持ち込まれたのではないかという考えに至った。以上の考察をまとめた論文を、早稲田大学総合人文科学研究センターのオンラインジャーナル『WASEDA RILAS JOURNAL』第10号に投稿予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の視角の一つとして挙げた民間芸能の方面の研究に取り組むことができ、清代「家将もの」の夫婦関係描写の検討というテーマにたどりついたため。
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Strategy for Future Research Activity |
民間芸能における「羅家将」および「薛家将」の物語は、同じタイトルや同じテーマを扱っているようでも、「夫婦関係の描き方」という視角から見ると何を強く描写しようとしているかという点において各々違いが見られる。各作品のそうした違いを詳細に分析し、可能な限りその見取り図を描くことを目標とする。その成果を以て清代における「家将もの」の発展と拡大を考察する本研究のテーマの集大成としたい。
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Causes of Carryover |
予算の大部分を旅費と資料収集費に当てているが、COVID-19の流行により国内外の移動が禁止、あるいは自粛となった時期が続き、ほとんど予算消化できなかった。 国内移動は緩和されたので、次年度は国内で閲覧できる資料を収集するために使用したい。また、複写物の郵送サービス等も有効活用する。
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