2022 Fiscal Year Research-status Report
清代における「薛家将」故事の発展と拡大に関する研究
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19K23053
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
柴崎 公美子 早稲田大学, 文学学術院, その他(招聘研究員) (70844140)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2024-03-31
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Keywords | 清代 / 中国通俗文芸 / 宮廷演劇 / 家将小説 / 羅家将 / 薛家将 / 家将もの / 説唐 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は2021年度に調査、検討を行った英雄と女傑妻の夫婦関係の困難について、薛丁山に三度の離婚(三休)を申し渡される樊梨花を中心として「説唐における休妻故事について」と題する論文にまとめ、早稲田大学総合人文科学研究センターのオンラインジャーナル『WASEDA RILAS JOURNAL』第10号に投稿した。 通俗歴史小説の世界における女傑妻の描写には、明末清初の社会に「女将」が多く登場し、その目覚ましい活躍が盛んに語られたことが反映していると考えられるが、樊梨花をはじめとする薛家将および羅家将の女傑妻たちの多くが自分の夫となんらかの衝突をすることについて考察した研究は管見の限り本論文の他になく、新しい視点であると認識している。 本論文執筆のための考察の結果、樊梨花が自分に対して酷薄な態度をとった夫薛丁山に強烈な報復をする点については、小説の描写が戯劇的なものであることから、民間の戯曲に材を求められるのではないかと考えた。樊梨花は唐、宋、元、明と長い時代に様々な媒体で語られ、演じられてきた薛家将故事においては清代の小説で初めて登場した後発のキャラクターであるが、その人物造形は、家将ものの嚆矢である「楊家将」故事の女将像を踏襲したものと考えられているものの、具体的に考察されたことはない。そこで本研究では、夫へ報復する女将という視点をもってそのモデルを検討することを試みた。検討の結果は2023年度中に博士学位請求論文の一節として執筆する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
清代「家将もの」の夫婦関係描写の検討の結果、薛家将故事の重要人物である樊梨花についての考察を深めることができ、本課題を総括する見通しが立ったため。
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Strategy for Future Research Activity |
清代における薛家将故事の発展について、2:地方芸能、3:他の「家将もの」(羅家将故事)を視角とした方面の研究はそれなりの成果を得られたと考える。よって、1:清朝宮廷演劇について再考し、本課題を総括する。
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Causes of Carryover |
予算の大部分を旅費と資料収集費に当てているが、COVID-19の流行が続き支出する機会を得られなかった。2023年度は国内の移動の制限がほぼなくなり、また台湾も日本からの入国制限が実質的に撤廃されたため、台湾での資料収集に活用したい。
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