2020 Fiscal Year Annual Research Report
古英語から中英語にかけての語順の変容に関する実証的研究
Project/Area Number |
19K23055
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Research Institution | Nagoya University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
高橋 佑宜 名古屋外国語大学, 外国語学部, 講師 (90844283)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 英語史 / 古英語 / 中英語 / 言語変化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、古英語から中英語において生じた語順変化のプロセスとメカニズムを明らかにすることで現代英語の成立に関わるより深い知見を得ることを目的としている。最終年度である2020年度は、本研究課題の下で行った研究成果の論文化に取り組んだ。
ひとつは、2021年5月に刊行が予定されている『明日の授業に活かす「意味順」英語指導―理論的背景と授業実践』の第4章「英語史からみた意味順」においては、MAP Grammar (Tajino 2018)のフレームワークを用いて、英語の通時的語順の発達過程について分析を行った。特に倒置語順に焦点を絞り、その変化と発達を調査した。倒置語順は古英語と中英語においてはごくありふれた現象であったが、時代を減るにつれて衰退し使用環境は次第に限定されていった点について論じた。
もうひとつは、2021年に出版が予定されている「『古英語殉教者録』における節レベルを超えた定型性」においては、『古英語殉教者録』における談話の展開と語順に関する考察を行った。殉教エピソードには共通する5つのパートがあり、それぞれにおいて語順に関わる定型表現が確認できることを指摘した。そして、それぞれのパートにおける定型表現は殉教エピソードという談話単位においても定型性を担う役割を果たしていると結論づけた。語順という観点から定型性を統語レベルに限定せずに談話レベルで分析することで、談話単位が殉教エピソードを物語るための雛形として慣習化していたことを明らかにした。
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