2019 Fiscal Year Research-status Report
Non-canonical case marking: A descriptive and theoretical study of the grammar of Northern Ryukyuan languages
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19K23060
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Research Institution | Beppu University |
Principal Investigator |
金城 國夫 別府大学, 文学部, 講師 (10847635)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 琉球諸語 / 格 / 記述言語学 / 生成文法 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年11月、2020年2月、3月にそれぞれ沖縄本島で那覇方言、金武方言の言語調査を行った。また、当初予定していなかった宮古島友利方言の話者を対象にした調査も行うことができた。主格・属格交代、主格目的語、与格主語、節への格標示に関する調査票を作成し、聞き取りを行った。特に主格・属格交替、主格目的語に関して興味深い結果が得られた。 まず主格・属格交代であるが、琉球語では基本的に主語の有生性によってガ・ヌの選択が決定されるが(内間・新垣 2000, Shimoji 2010等)、関係節などの埋め込み環境ではヌの使用範囲が拡大することが観察された。例えば金武方言において、主節では親族呼称主語はガのみが許されるが、関係節においてはガ・ヌの両方が許容される。例:ウットゥーガ/*ヌ ユーバン シコタン(弟が夕飯を作った)vs. ウットゥーガ/ヌ シコテヌ ユーバン(弟が作った夕飯) 同様のパターンは那覇方言、宮古島友利方言の観察でみられたことから、琉球諸語一般に当てはまる現象である可能性がある。有生性に基づく格付与と構造に基づく格付与の相互作用を示す興味深い現象であり、理論的な分析を進めていく必要がある。 主格目的語に関しては、主文では不可能だが従属節では容認される場合が多いことが明らかになった。例:ハナコヤ エーゴ*ガ/*ヌ ユミーヨースン(花子は英語が読める) vs. エーゴガ/ヌ ユミーヨースル チュー(英語が読める人) 今後はどのような従属節で主格目的語が認可されるのか、またその言語・方言差に関しての追加調査及び理論的分析を進める必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究成果の一部を発表する予定だった青山学院大学英文学会が新型コロナウイルス拡大により中止になるなど、成果発表においてはやや進展に遅れがあるものの、調査自体はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、1.調査対象の奄美方言への拡大と2.記述データの理論的分析の2点を中心に研究を推進していく。徳之島、奄美大島、喜界島などの方言を対象に、「研究成果の概要」に記したような主格・属格交替と主格目的語のパターンが見られるかどうか、あるいは本島方言には見られなかった非典型的格標示のパターンがあるのかを確認していく。調査は夏に行う予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大の状況によっては秋や冬へ調査時期を変更する可能性がある。また、主に日本語における非典型的格標示に関する生成文法研究を中心に先行研究をまとめ、本研究で得られた北琉球諸語の格標示に関する理論的な分析を進めていく。 研究成果の一部を第160回日本語言語学会にて発表する予定である。その他にも国際学会や学術誌で研究成果を発表することを予定している。
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Causes of Carryover |
1.3月末に実施した調査にかかる旅費が当初の予定よりも多くなったため、次年度使用分に繰り越した。2.3月末に予定していた講演発表が新型コロナウイルス感染拡大の影響によりキャンセルになったため、滞在費等の旅費が必要で無くなった。以上二つの理由により次年度使用額が生じた。今後は主に調査研究のための機材購入や旅費及び謝金、研究発表のための旅費、研究図書の購入に充てる予定である。
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