2019 Fiscal Year Research-status Report
室町後期における連歌師の講釈・注釈活動による源氏学の伝播と変容に関する資料的研究
Project/Area Number |
19K23063
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Research Institution | National Institute of Japanese Literature |
Principal Investigator |
ノット ジェフリー 国文学研究資料館, 研究部, 助教 (30847794)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 連歌 / 源氏学 / 源氏物語 / 宗祇 / 注釈 / 受容 / 中世 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、室町後期から戦国時代にかけて『源氏物語』の受容史に計り知れない影響を及ぼした連歌師の講釈・注釈活動の実態を、現存する注釈資料の調査を通じて解明し、またその活動が果たした源氏学の地方への広がりと、その伝播過程において源氏学自体に起こった変容とを追跡することを目的とする。この統一目標のもとで、(1)連歌師宗祇の活動の解明、(2)宗祇門の重要な弟子、特に宗碩と兼載とその門弟の活動の解明、また(3)連歌師の活動を反映する源氏学関連資料の調査、以上3つの具体的な課題を設定した。2019年度に(1)と(2)に重点を置き研究活動を進めた。 (1)については、宗祇による『源氏物語』関連の注釈資料の伝本調査を進め、特に『帚木別注』伝本の悉皆的調査においては諸本の相互関係が明らかになりつつある。 (2)については、祇門の源氏学を豊富に伝える資料として兼載の子孫にあたる長珊が残した『長珊聞書』の研究を行い、宗祇の学問の受容を中心に検討した。 (3)に関しては主に次年度の活動とするが、本年度の研究成果の一部としてそのための調査方針が固まり、計画通りに推進する用意もある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)については、本年度に予定していた宗祇『種玉編次抄』の伝本調査はやや遅れているが、その一方で宗祇による注釈資料の調査・検討を全体的に進められ、計画遂行の妨げとならない。 (2)については、その源流となる宗祇本人の注釈の検討と並行に行う効果もあり、『長珊聞書』の注釈方針の検討が進んで、論文で公開する予定の成果を得られた。また別の観点から、こうした注釈資料の文学史における位置づけについても考察を試みて、計画通りに英語・日本語で二回の口頭発表を行い、雑誌において特に宗祇とその門弟による源氏学への貢献を概略的に考えた論文を執筆した。 (3)に関しては上述のごとく、計画通りに次年度にその調査を行う予定でいる。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルス感染症による影響も懸念されるが、その状況が許す限り、次年度は引き続き各地の所蔵先に出向いて、その現存注釈資料の調査を通じて中世後期における連歌師源氏学の実態を検討していく。
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Causes of Carryover |
特に新型コロナウイルス感染症の影響により、国内外の学会参加・調査計画等を一部断念せざるを得ない状況となった。次年度は予定していた調査等を計画通りに行い、それに合わせて研究計画の遂行に必要と思われる機器・物品をも購入する。
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Research Products
(3 results)