2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K23064
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Research Institution | National Institute for Japanese Language and Linguistics |
Principal Investigator |
呉 寧真 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 言語変化研究領域, プロジェクト非常勤研究員 (10846380)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 複合動詞 / 客体敬語 / 謙譲語 / 通時的 / 日本語歴史コーパス |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、複合動詞の敬語形について、主体敬語の方をまとめ、用例アノテーションの作成を完成した。また、客体敬語の方は調査を進み、主体敬語と対照できるように、使用実態を研究している。 用例アノテーションについて、近年で作成の呼びかけは見えるが、作成の習慣が定着せず、用例の公開がほとんど見当たらない。すべての研究者が研究データを公開し、共有させるため、本研究はデータ公開する研究の一つとして意味を持つと考えられる。研究データは、整備が完了した後、researchmapで公開する予定である。また、すでに公開した論文は修正できないが、これから投稿する論文では、公開データのURLを明記する。今年度では、12月3日に、「中世語の複合動詞の敬語形」という題目をNINJALサロンで発表した。その場での質疑問答を反映させ、『国立国語研究所論集』に投稿する予定である。 客体敬語の調査について、今のところ、「-おはします」は「-おはす」より敬意が高いように、主体敬語のような、敬意差による段階が観察できない。従って、客体敬語の構造は、主体敬語の構造と異なると想定できる。ただし、その構造の違いは何によるものなのか。動作客体の身分差の必要がないためなのか、複合動詞になる以前に、「まかる」「聞こゆ」のような敬語独立動詞はすでに主体敬語の独立動詞より少ないためなのか、客体敬語の使用は、主体敬語の使用より控えめであるためなのか、もしくは、複合動詞の使用上の問題なのか、その原因を究明するには、さらなら調査が必要である。また、今まで調査対象から外した、「-たてまつりたまふ」のような二方向敬語も、視野を入れる必要があると考え、調査対象を拡大する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通り、主体敬語の用例アノテーションの作成は完成した。また、客体敬語の使用実態の調査も進めている。二方向敬語も調査することで、調査対象の拡張により、作業量は当初の予定より多くなったが、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究については、これからの調査資料をまとめ、客体敬語と主体敬語の体系の差について、その理由を究明し、複合動詞の敬語形の構造を明らかにする。 また、研究成果の公開について、当初は学会発表と論文投稿を計画していたが、コロナウイルスの影響により、国際発表はできない見込みである。国内発表も難しい場合、学会発表をせず、論文投稿だけ実行する予定である。
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Causes of Carryover |
コロナウイルスの影響で、2019年度3月に実施する予定の学会が中止になり、旅費として計画した金額を支払いできず、次年度使用額が生じた。 翌年度分として請求した助成金と合わせて、書籍・物品の購入、資料整理のための人件費として使用する予定である。
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Research Products
(1 results)