2019 Fiscal Year Research-status Report
Global circulation of Japanese classical literature: Tracing Hojoki's Western reception
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19K23065
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Research Institution | International Research Center for Japanese Studies |
Principal Investigator |
Pradhan Gouranga 国際日本文化研究センター, 研究部, 機関研究員 (40847224)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 世界文学論,翻訳研究,古典文学,日本研究, / ポストコロニアル研究、 / 方丈記、鴨長明、 / バンティング、ムッチョリ, / world literature / translation studies, / hojoki, kamo no chomei, / bunting, Muccioli, |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、20世紀初頭において日本の古典文学作品である『方丈記』の海外における受容を明らかにしつつ、「世界文学」および「翻訳研究」の視点から日本の古典文学の国際的な展開を明らかにするものである。かかる研究目標のうち、研究計画初年度の令和1年度(2019年9月~翌年3月まで)には、以下の研究を実施した。 まず、本期間中に市川代治(1872‐?)の伝記及び彼が行った『方丈記』のドイツ語訳に関する資料収集を行った。市川の伝記に関しては、国内の図書館(国会図書館、国立公文書館、外交史料館など)からの資料を収集した。また、彼の訳文の内「まえがき」部分の分析を行った。次に、本期間中に予定した土屋信民(1873‐1933)による『方丈記』の部分的なフランス語訳の分析を行った。これらの調査結果を踏まえ、令和2年度に両者の比較検討を行う予定である。 次に、上記の調査を行う過程で、当初計画していなかったムッチョリ M.(1898-1976)による『方丈記』のイタリア語訳(1930年刊)に関する新資料を発見したため、その研究を実施した。とりわけ、1930年代の世界秩序及び歴史空間のなかで、日本の知識人はこのイタリア語訳の完成になぜ、いかなる形で関わったのかを明らかにした。また、このイタリア語訳は、さらに英詩人バンティング(Basil Bunting, 1900-1985)によっていかに受容されたのか、その詳細を調査した。これら調査結果は、2019年11月に国立台湾大学で行われた東アジア日本研究者協議会・第4回国際学術大会と、2020年2月にコーネル・クラブ(アメリカ・ニューヨー)で行われた国際シンポジウムで2回にわたって研究発表を行った。現在、この成果を研究論文にまとめ、学会誌に投稿する準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度は、当初の予定通りに国内の資料をぼほ網羅的に収集し、一部の資料分析も完成できたものの、当初計画していた海外での資料調査は、コロナ禍の影響で実施できていない状態にある。特に、市川代治の伝記の整理については、2020年3月~4月に予定していた国内外での現地調査はできず、資料収集はできなかった。そのため、4月以降に更なる資料収集を行い、彼の伝記を整理する予定である。一方で、当初予定していなかったムッチョリの『方丈記』のイタリア語訳と、英詩人バンティングによるその受容に関しては、調査を完了し、2回にわたって研究発表を行った。その成果は論文としてまとめている。その意味で、『方丈記』の国際的な展開に関して重要な進展があったと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、引き続き市川の伝記に関する国内外の資料を収集し、彼の伝記を参照しつつ、その『方丈記』訳を分析する。具体的には、市川のドイツ語訳と土屋のフランス語訳を比較検討し、当時の日本の知識人はいかなる形で日本の古典文学を海外に投企しようとしたのかを考察する。同時に、本期間中に計画しているルヴォン(Michel Revon, 1867-1947)が行った『方丈記』のフランス語訳も分析する。これまで調査してきたムッチョリとバンティングなど欧米人の『方丈記』理解を背景に、ルヴォンの『方丈記』への関心を明らかにすることで、この時期における欧米の知識人の日本古典文学への関心を明確にさせる。最終的に、日本と欧米の知識人は20世紀初頭の歴史空間のなかで日本の古典文学をいかに捉えたのか、世界文学・翻訳研究の視点から、その比較検討を通してそれぞれの立場を捉え直すことを目指す。さらに、2019年度と同様に、研究成果は数回にわたって国内外の学会で発表し、論文にまとめる予定である。
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Causes of Carryover |
当初予定していた海外での資料調査がコロナ禍のため実施できず、それ故に次年度使用額が生じた。2020年度には2019年度に実施できなかった資料調査に加え、研究成果の発表のための国内外の学会大会参加旅費および論文執筆に係る謝金、資料収集等での使用を計画している。
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Research Products
(3 results)