2021 Fiscal Year Research-status Report
Global circulation of Japanese classical literature: Tracing Hojoki's Western reception
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19K23065
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Research Institution | International Research Center for Japanese Studies |
Principal Investigator |
Pradhan Gouranga 国際日本文化研究センター, 研究部, 機関研究員 (40847224)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 方丈記の海外流通 / 世界文学としての方丈記 / 市川代治 / 翻訳論 / 世界文学 / 夏目漱石 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、19世紀末期~20世紀初頭における中世日本の文学作品『方丈記』(1212)の海外受容を明らかにしつつ、世界文学の視点から日本の古典文学の国際的な展開を考察することを目指している。かかる研究目標のうち、研究計画3年度目の2021年度(2021年4月~翌年3月まで)には、以下の研究を実施した。 まず、夏目漱石による『方丈記』の最初の外国語訳をはじめ、1930年代までのアメリカとヨーロッパ地域におけるこの作品の受容を考察した研究成果を広く紹介すべく、その刊行に向けて準備作業を行い、2022年3月に『世界文学としての方丈記』(単著、法蔵館)を刊行できた。本書は、『方丈記』の海外受容を考察したはじめての学術書であり、そうすることで本作品を世界文学として位置付けることに成功した。 次に2021年度に計画していた、市川代治(1872‐?)の伝記に関する資料を収集し、彼の伝記を参照しながら、その『方丈記』訳の分析を完成できた。また、市川のドイツ訳と土屋信民(1873‐1933)の『方丈記』の部分的なフランス語訳の比較検討し、当時の日本の知識人はいかなる形で日本の古典文学を海外に投企しようとしたのかを考察した。なお、これまで調査を続けてきた夏目漱石の翻訳論について研究発表を行い、『方丈記』英訳をはじめ、彼の作品などから窺えるその翻訳論について研究論文をまとめ、2022年度に刊行予定の学術書の一部として発表予定である。さらに、本年度はタラル・アサド著『リベラル国家と宗教: 世俗主義と翻訳について』について書評論文 “Secularism and Untranslatability- Reading Talal Asad’s Secular Translations” (Religious Studies Review, Rice University, 2021年6月,磯前順一と共著)を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度に、当初の予定していた『方丈記』の海外受容の研究をまとめ、『世界文学としての方丈記』(単著、法蔵館)を出版することができた。市川代治と土屋信民に関しては、国内の資料を網羅的に収集し、その分析もほぼ完成できた。また、当初予定していなかった夏目漱石の翻訳論についても研究論文をまとめることができた。2021年度におけるこうした研究成果は、『方丈記』の海外受容研究に関して重要な進展であり、さらには日本古典文学の国際展開についての研究にも大きく貢献できたといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、市川代治と土屋信民の『方丈記』理解をまとめて、研究論文を準備し、学術誌に投稿する。そして、夏目漱石の翻訳論に関する原稿を寄稿し、年度内の刊行を目指す。また、昨年度から新たに調査してきた『方丈記』初のイタリア語訳を行ったムッチョリ(Marcello Muccioli, 1898-1976)とイギリスのモダニスト詩人バンティング(Basil Bunting, 1900-1985)によるイタリア語訳の更なる受容について継続して資料収集と分析を行う。なお、研究成果に関しては、昨年度と同様に数回にわたって国内外の学会で発表し、論文にまとめる予定である
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Causes of Carryover |
コロナ禍のため、2021年度に計画していた国内外の現地調査ができず、次年度使用が生じた。2022年度中に、国内調査(山形県・東京都)、学会発表(日本比較文学会、日本説話文学会、その他)、論文発表を予定しており、それに伴い旅費、学会参加費、研究成果発表費等を支出する予定である。
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