2022 Fiscal Year Annual Research Report
Global circulation of Japanese classical literature: Tracing Hojoki's Western reception
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19K23065
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 世界文学 / 翻訳論 / 夏目漱石 / 方丈記 / 鴨長明 / 災害文学 / 日本古典文学 / 市川代治 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、19世紀末期~20世紀初頭における古典名作『方丈記』(1212)の海外受容の一部を明らかにし、そうすることでこの作品を「世界文学」作品として位置づけなおすことを目指している。この研究目標を達成すべく、最終年度(2022年4月~翌年3月まで)に、以下の研究を実施した。
まず、最終年度に『方丈記』を初めてドイツ語訳に訳した市川代治(1872‐?)の自伝的な情報を整理しつつ、このドイツ語訳に関する資料収集を行った。また、『方丈記』のドイツ語訳の内容を分析して、20世紀初頭の時代空間において、市川の狙いについて考察を行った。続いて、20世紀初頭の海外における『方丈記』の受容に関しては、これまでに注目されてこなかった、南アジア地域で刊行された文芸誌・学術誌に掲載された『方丈記』への言及について資料収集と分析を行った。とりわけ、欧米の知識人を通して、植民地下にあった南アジア地域では、日本の古典文学はいかに理解されたのか、『方丈記』の事例から研究を実施した。最終年度に行ったこうした研究は、本研究の全体的な目標を達成するのに役に立ったと言える。
本研究期間全体(平成31年~令和3年度)に行った研究を通して、これまでに国文学という枠組みの中で論じられてきた『方丈記』は、19世紀末以後、欧米のみならず、南アジアなど世界の様々な地域でも読まれていたことを明らかにし、この作品を「世界文学」として位置づけなおした。また、本研究は近年注目されつつある「翻訳論」や「世界文学論」議論の更なる展開にも貢献したとともに、今後の日本の古典文学研究の方向性にも影響を及ぼすことが期待できる。なお、本研究はこれまであまり議論されてこなかった若い頃の夏目漱石の思想を理解するためにも重要な貢献ができたと言える。
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Research Products
(7 results)