2019 Fiscal Year Research-status Report
Interaction between the syntactic structure and semantic interpretation of definiteness/specificity in nominal phrases
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19K23073
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宮内 拓也 東京大学, 大学院教育学研究科(教育学部), 特任助教 (50781217)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 名詞句 / NP / DP / 定性 / 特定性 / ロシア語 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は,冠詞のない言語の名詞句の統語構造を明らかにすることを目的に,特にロシア語の名詞句を対象に,統語構造と定性・特定性の意味解釈との関係を中心に検討するものである. 今年度は,数詞と所有代名詞を含む句の解釈を中心としてこの問題にアプローチした.数詞と所有代名詞を含む句においては語順により最大解釈を得られる場合と得られない場合がある.これを扱った先行研究は最大解釈を得るメカニズムは名詞句の構造にあるとしており,顕在的な冠詞がないロシア語においても名詞句がDP構造を有すると結論付けている.しかし,本研究では先行研究では扱われていない所有表現についても検討を加え,先行研究を否定する結果を導き出した.さらに,存在文における定性制約,否定属格現象といった定性・特定性が表出する現象を用いて,最大解釈と定性・特定性の関係性と名詞句の構造を検討した.これについては,論文にまとめ,現在採択が決定している. また,今年度は名詞句の構造について出来事名詞の点からも検討を加え,出来事名詞句内部の束縛現象や作用域凍結現象を説明できるような,より説明力のある統語構造を提案した.これについては国際会議で発表し他の研究者からコメントを受けた上で,現在論文執筆中である. 加えて,ロシア語・日本語のパラレルコーパス構築に向けて作業を進めている.日本語テキストには定性・特定性のアノテーションが付与されており,ロシア語・日本語テキスト間のアライメントがとられているため,次年度ロシア語テキストにアノテーションを付与することを予定している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度はすでに得られた成果を論文として公表するための準備等については特に進展があったといえる.しかし,研究実施者の研究機関異動に伴う当該研究課題へのエフォートが低下したこと,当該研究課題実施に関して(異動前機関と比して)異動先機関における事務的負担が増大したこと,新型コロナウイルスの流行により新たなデータの収集,研究成果,および経過の報告の機会の取得,研究課題遂行に必要となる物品の調達などが滞ったこと,という3点を理由に全体として研究課題の進捗はやや遅れている状況である.
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Strategy for Future Research Activity |
以降はすでに実質的に一定の成果が上がっていながら発表できなかったものについて,細部の検討を加えた上で,それらの研究成果発表を中心に研究を続行する.2020年度は新型コロナウイルス流行の影響から,口頭発表の機会が減少することが見込まれるため,特に論文の形態による成果の公表を中心に据え,それらの執筆を行うことを予定している.
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス流行の影響により口頭発表の機会が減少したこと,および物品調達に停滞が見られたことに伴い,発表のために見込まれていた旅費や校閲費,および物品費を予定通り執行することができなかったため次年度使用額が生じた.これらはコロナウイルスの影響が一定程度収まることで当初の計画の通りに次年度に使用することが可能であると考える.
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Research Products
(13 results)