2019 Fiscal Year Research-status Report
マーク・トウェイン初期作品における自伝的構築と北米先住民表象の黙説的連関
Project/Area Number |
19K23089
|
Research Institution | Yamanashi Eiwa College |
Principal Investigator |
杉村 篤志 山梨英和大学, 人間文化学部, 講師 (70846667)
|
Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
|
Keywords | マーク・トウェイン / ネイティブ・アメリカン / 南北戦争 / 自伝 / 良心 / 怨恨 |
Outline of Annual Research Achievements |
1850年代から1860年代にかけてのマーク・トウェイン(サミュエル・クレメンズ)の最初期の断章、雑誌記事、The Innocents Abroad (1869)における先住民描写を精査した。トウェインが1860年代以降繰り広げたウォルター・スコット批判とジェイムズ・フェニモア・クーパー批判の構造・修辞上の類同性を確認し、トウェインが描いた「人種差別主義者の南部白人」像と「野蛮なインディアン」像のあいだの近縁性を明らかにした。また、“Only a Nigger” (1869)においてトウェインが、白人至上主義を奉ずる「高潔な南部人」の姿を戯画的に再演しながら「冷血ヤンキー文明の感傷性と人道主義」に侮蔑的に言及していることに着目し、一人称で語られるその「南部白人の声」の残響を1870年の先住民差別エッセイ“The Nobel Red Man”のうちに確認した。本研究は、ルーシー・マドックス(Lucy Maddox)らによって指摘されてきた「米文学研究におけるネイティヴ・アメリカンの周縁化」問題への現代的応答のひとつとして位置づけられる。トウェインのテクストを通して1860-70年代のスー族インディアン迫害史を19世紀中盤の米国・カナダにおけるUnderground Railroadの諸活動に照らして吟味する本研究はまた、アメリカ例外主義批判を背景とした近年のアメリカ研究領域における Transnational Turn への応答性についてもすぐれて自覚的である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以前行った米国での在外研究で入手した一次資料を元に、概ね予定通り研究を遂行することができた。新型コロナウィルスのパンデミックの影響のため、予定していた米国での調査研究計画については現状では実現可能性が未知数である。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究内容に変更はないが、新型コロナウィルスの世界的感染拡大を受け、米国での調査研究が実施可能か不透明な状況にある。国内に留まって研究を遂行するか、可能であれば在外研究の実施時期を遅らせることを検討したい。
|
Causes of Carryover |
コロナ禍の影響で、購入予定だった洋書専門書の入手の目途が立たず、次年度使用額が生じた。次年度に購入したいと考えている。
|