2019 Fiscal Year Research-status Report
Development of Plurilingual Materials for the Team-taught Elementary English Classroom
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19K23092
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Research Institution | Kyoto Notre Dame University |
Principal Investigator |
Daniel Pearce 京都ノートルダム女子大学, 国際言語文化学部, 講師 (40845088)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | ALT / 複言語教育 / 小学校 / ティーム・ティーチング / 教材開発 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、外国語指導助手(ALT)の持つ言語リソース(英語、日本語、その他な外国語)を複言語教育に基づく教授法によりそのリソースを教育に還元する可能性を追及する。本研究の目的は、①ALTの使用可能な言語を把握する、②学級担任・ALTのニーズ分析を行い、教室内の言語リソースを活かす授業の在り方を検討する、③言語リソースを活かすための手引き・教材集データベースを構築する、の三つである。このような研究目的に対し、初年度に、以下の5点に取り組んだ。 ①使用できる言語について調査を行い、回答者178分のデータを収集して分析を行った。結果からA)ALTの6割は英語・日本語以外にも使用できる言語を持っているが、B)8割近くは教室内に英語しか使用しないため、そのリソースは教育に活かされていないことが明らかになった。分析結果を論文にまとめて投稿し、現在査読中である。 ②学級担任(2名)に対して、ALTとのかかわり方についてインタビュー調査を行った。学級担任は多言語・多文化に開かれている態度を示していたが、ALTの多様性について十分に知識が得られていないことが明らかになった。 ③ALT(6名)に、言語・文化的来歴や、教室内に使用する言語などについてインタビュー調査を行った。多言語を持つALTがその言語や文化を授業に活かすことを望んでいるが、教科書の縛りや学級担任によってそれらのリソースを十分に活かせていないと感じるALTがいることが明らかになった。 ④教材集のデータベースの参考とするため、令和元年度11月から2月まで、小学校での複言語教育実践を計6回観察し、教材作成に関する話し合いに参加し、また授業実践のデータ収集を行った。 ④上記の②、③の結果は現在分析中であるが、教員養成や教材作成等に示唆が得られることが期待されている。また、上記③、④の分析結果を海外でそれぞれ令和2年度に学会発表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」の項で示したように、デモグラフィック調査、ALTおよび学級担任のニーズ把握のためのインタビュー調査、および教材作成の取り組みについて、おおむね順調に進んでいる。本研究の目的①はすでに達成し、②と③の実施は始まったところであるが、そこで収集したインタビュー・データの文字化作業を終え、必要な部分の翻訳作業を進めている。新型コロナウィルスの影響で対面インタビューの実施が困難になったため、ネットを通してインタビューをするなど、工夫をしてデータ収集に努めている。 関連して、11月にはフランス国立東洋言語文化学院のDr. Gilles Forlot氏の来日に際して、京都ノートルダム女子大学で講演を依頼してそれをコーディネートした。そこで社会言語学の視点から多言語社会における外国語としての英語の位置づけや、複言語教育における英語の役割等に関する知見を得た。 さらに、日本の文脈における複言語教育の意義を理解するにあたり、京都大学に招聘されたDr. Daniele Moore氏の協力を得ることができた。3月にMoore氏を含めて他の研究者と共催で複言語教育に関する国際研究集会をする予定だったが新型コロナウィルスの影響でできなくなった。その代わりに、現在、共同で小学校における複言語教育に関する論文執筆に取り組んでいる。Moore氏は複言語主義の理論における第一人者であり、協働で仕事をすることを通して、申請者の視野を大きく開くことにつながっている。 一方、当初の計画では海外の複言語教育の実践について調査研究をする予定であったが、新型コロナウィルスの拡大を受け、実施の見通しを持つことが困難になっている。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度は、ALTおよび学級担任に対するインタビュー調査を続け、「研究実績の概要」で述べた研究目的②③をさらに追求する。②については、令和2年度のうちに研究対象者の学級担任・ALT合わせて約20名程度にインタビューをする予定である。ここから、インタビューで収集したデータをもとに、ALTの使用言語(英語・日本語・その他外国語)はどれくらい授業に活かされているか、ALTや学級担任が英語・日本語以外の言語に関する態度や考え等を明らかにする。 また③のために、次を行う。複言語教育を導入した授業の観察や記録を元に、授業実践を分析した上で、学習指導要領における小学校外国語・外国語活動の目標と照らし合わせながら、複言語教育に基づく授業の意義・進め方・伸ばす能力、又はALTと協働授業の実現の可能性を検討する。さらに、他の研究者、教育実践者らとの協働のもとで、言語リソースを活かすための手引きや教材集を公開するためのウェブサイト構築に取り組む。
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Causes of Carryover |
令和元年度に予定していた論文校正費(謝金)支給の申請は遅れて、また新型コロナウィルスの影響で学会中止、予定していた対面インタビューや海外の複言語教育の実践について調査研究の実施が困難になったため、次年度使用が生じた。次年度の使用計画は次の通りである。 ①令和2年度に予定しているインタビューおよび収集したデータの書き起こしの実行補助としての謝金を計上する。②新型コロナウィルスによる交通規制等が緩和されれば当初予定していた海外の調査研究の実施に充てる。③令和2年度にウェブサイトを構築する予定であるため、ウェブサイト作成にかかる謝金や管理費を計上する。④現在準備中の論文の校正費に支出予定である。また、国内外の学会参加費にも支出する予定である。
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Research Products
(2 results)