2019 Fiscal Year Research-status Report
感情と態度を表す日本語語彙文法の研究:言語使用域の多様性を通じて
Project/Area Number |
19K23097
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Research Institution | National Institute for Japanese Language and Linguistics |
Principal Investigator |
越智 綾子 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, コーパス開発センター, プロジェクト非常勤研究員 (50776119)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 日本語 / 言語学 / 選択体系機能理論 / 感情 / 語彙 / 言語使用域 |
Outline of Annual Research Achievements |
①現代日本語のムード、モダリティ、証拠性という三つの文法体系について選択体系機能理論の観点から研究代表者がこれまで行ってきた記述を、より多くのテキストデータに基づいて精査して訂正し発展させた。その研究成果はISFC2019のタイポロジーコロキアムにて発表した。ムード、モダリティ、証拠性は対人的メタ機能の中心的な文法体系であり、これらを通じて感情と態度の言葉が発現する。よって、感情と態度の言葉の研究にはこれらの文法体系の理解が必須であり、本研究のテキスト分析に用いる基礎的な言語資源の整備ができた。 ②上記の①で行った文法体系の記述をもとに、テキスト分析のアノテーションに使用するデータベース・プログラム SysFanの加工・修正に着手した。SysFanは選択体系機能理論を用いた研究のために開発されたものであるが、元来英語の分析用に開発されたものであるため、①の日本語文法記述がプログラムを日本語の分析用にアップデートするための資料となる。本研究では選択体系機能理論における対人的メタ機能に焦点を置いているため、 対人的メタ機能のみの分析にのみ使用可能であるが、将来他の二つのメタ機能の既存の記述をプログラムに取り入れれば、SysFan日本語版が日本語研究者によってに幅広く活用できるものになると期待する。 ③「日本語日常会話コーパス」と「現代日本語書き言葉均衡コーパス」 から、データとして用いるテキストを、本研究で焦点を当てる言語使用領域別(例:世間話、レビ ュー、ドラマ、人生相談コラム、天気予報、広告、ニュ ース)に抽出し、テキストアーカイブを作成した。このアーカイブは、今後もテキストを追加して随時拡大していく予定である。今後は、アーカイブに収録されたテキストを分析してその分析結果を言語使用域別に集計し、この集計結果を比較することにより、言語使用域毎の特徴を明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
①テキスト分析に用いるシステムの開発を依頼したオーストラリアのマコーリー大学のウー博士と打ち合わせを行うために3月に渡豪する予定でしたが、新型コロナの影響で中止になってしまいました。現在、遠隔で打ち合わせをして進めておりますが、対面で作業するのと比較して効率が悪く、システム開発が遅れています。それに伴い、分析システムを使用するアノテーション付与作業の開始にも遅れが生じています。 ②2020年に参加して研究成果を発表する予定であった海外で催される学会が全て2021年に延期となってしまいました。具体的には、ISFC 2020、ESFLC 2020とASFLA 2020です。成果発表の機会として代わりにオンラインの学会への参加を検討しています。
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Strategy for Future Research Activity |
①選択体系機能理論に基づくテキスト分析用のデータベース・プログラムSysFanを日本語分析用に加工・修正し、これを用いて「日本語日常会話コーパス」と「現代日本語書き言葉均衡コーパス」からアーカイブに抽出したテキストの分析を行う。 ②コーパスを使って①の分析結果の日本語における普遍性を確認した後、レジスター毎のプロファイルを作成して比較し、複数のレジスターのプロファイルをまとめて日本語の感情を表す語彙-文法の包括的記述とする。同時に、既存の日本語語彙-文法の体系記述を検証し、必要に応じて修正・拡張する。 ③来年度に延期となった学会は、研究成果を発表するだけでなく他の研究者からフィードバックをもらって内容を精査・訂正する貴重な機会であるため、延期となった学会に参加するために計画を一年延長することを希望している。
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Causes of Carryover |
2019年7月に国際学会ISFC2019で研究発表を行ったが、その時点ではまだ科研費の採択可否が不明であったため、会場のサンティアゴ(チリ)への旅費は科研費から支出していない。また、テキスト分析用プログラムの加工を依頼・相談するために3月に予定していたオーストラリアのマッコーリー大学訪問が新型コロナの影響でキャンセルになったため旅費が支出されなかった。さらに、2020年に参加予定であった学会(アブストラクト提出済みのものもあるが合否は未発表)が全て2021年に延期となったため、その参加費と旅費も支出されなかった。プログラム修正と作業補助のための人件費はこれから順次支出する予定である。
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Research Products
(1 results)