2019 Fiscal Year Research-status Report
Local Politics and Irrigation Management in Early Colonial Taiwan
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19K23103
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
前野 清太朗 東京大学, 教養学部, 特任研究員 (70844819)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 植民地社会史 / 水利史 / 地域エリート / 漢人・華人研究 / 地域社会 / 地方志・地方史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、小規模水利施設の管理に着目し台湾本島内の環境・開発史を異にした地域間の比較によって清朝統治末期から日本統治初期にかけての地域社会の社会関係の変容を明らかにすることである。「水利」という対象(case)を通じ本研究は最終的に台湾史研究における新たな時代把握の枠組みづくりへの貢献をめざす。 令和元(2019)年度は既存研究文献のレビューをすすめながら、本研究が対象とする清朝統治末期から日本統治初期(大まかに1870年代から1900年代にかけて)の期間の対象地域社会(台湾北部からは新竹北部エリアと台湾南部からは嘉南平原北部エリア)の同時代的状況を示す資料のうち、台湾総督府行政文書(台湾総督府公文類纂)および国立台湾図書館所蔵の書籍資料を中心に目録化を行った。当初、国内で可能な文献収集に続け、令和二(2020)年1月から3月にかけ現地での文献収集とフィールド調査を実施して研究を進展させる予定であったが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な流行拡大に伴い、年度内の調査拡大は断念せざるをえなかった。 範囲を広めての現地調査(とりわけ非デジタルの資料収集)は実施できなかったものの、近年整備のすすんでいるオンラインで公開可能なデジタルアーカイブ(國史館臺灣文献館館蔵史料査詢系統、臺灣臺灣圖書館日治時期圖書電子影像系統等)を活用して、一定程度目録化した資料の分析にまで踏み込むことができた。とくに地域社会の運営を担った中核層(地域エリート)らについて、「水利」慣行関連記述をふくむ修志事業(漢文地方志の編纂)を中心とした清朝統治末期から日本統治初期の活動の連続性について整理をすすめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和元(2019)年度は本研究助成の交付がなされた9月以降、順次関連する一次・二次文献の収集および既存文献のレビューを中心とした文献調査を中心に研究にとりかかった。年度内においては、台湾北部と南部それぞれ1地域について、清朝統治末期から日本統治初期の地域社会の実態を示す一次資料・二次資料の目録作りを進めていた。既存研究文献のレビュー作業と並行しての目録作成をふまえ、令和二(2020)年2月~3月にかけて文献調査・フィールド調査を拡大して実施する予定であったが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行の世界的な拡大に伴い、海外調査の実施は自粛・断念せざるをえなかった(1月に台南市後壁区D村での「水利」慣行に関するフィールド調査のみ限定的に実施)。2月以降は国内でも図書館・大学施設等の利用自粛がみられるようになったため、文献調査のソースの中心をオンラインリソースに切り替えて対応せざるをえなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
令和二(2020)年5月現在の段階で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行に関する収束時期の予測は困難であり、仮に今後国内的な流行が沈静化したとしても文献調査およびフィールド調査を含む海外渡航が可能となる時期は令和二年度後半以降となるものと考えられる。加えてキャンパス入構制限による事務機能の縮小に対応して、本研究を含む予算執行は所属研究機関内において一定程度の制限が加えられる。 よって本年度(令和二(2020)年度)は本研究計画の最終年度ではあるが、当面のあいだは利用可能なリソースの駆使によって可能な範囲で最終的な研究目標への接近をめざしたい。オンライン利用可能なデジタルアーカイブ(國史館臺灣文献館館蔵史料査詢系統、臺灣臺灣圖書館日治時期圖書電子影像系統、臺灣大學臺灣法實證資料庫など)を活用して一次・二次資料の収集と更なる目録化を進めるとともに、国内図書館等の再開後は非デジタル資料(ジェトロ・アジア研究所図書館所蔵の土地調査始末稿本など)の閲覧・収集を試みる。COVID-19 流行の安定と国際的な渡航回復に関する国内外の状況を順次確認しつつ、年度後半以降、可能な範囲で現地(台湾)での文献収集とフィールド調査を実施する。ただしフィールド調査については年度内に実施可能な調査は最小限のものとなる可能性が高いため、新たな調査先との接触をはかって本研究助成終了後の継続調査に対する足掛かりとすることを想定する。 以上の文献調査を中心とした研究活動の成果をふまえ、現在執筆中の論文一篇の投稿ならびに新規論文一篇の完成を令和二年度末までに行う予定である。
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Causes of Carryover |
当初、令和元(2019)年度に関しては同年度の2月~3月にかけて台湾における幅広い文献調査・フィールド調査の実施を予定していたが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行の世界的な拡大に伴い調査規模を大幅に縮小および自粛・断念せざるをえなかった。また2月以降、所属研究機関への入構自粛を含む社会活動制限の要請のなかで必要書籍購入等の予算執行についても控えざるをえなかった。令和二(2020)年度の繰越予算についてもCOVID-19再流行等の不測の事態が十分に考慮されるが、海外渡航を伴わない文献調査の比率拡大によって予算支出対応を行う予定である。
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