2020 Fiscal Year Research-status Report
Local Politics and Irrigation Management in Early Colonial Taiwan
Project/Area Number |
19K23103
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
前野 清太朗 東京大学, 教養学部, 特任助教 (70844819)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2022-03-31
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Keywords | 植民地社会史 / 「旧慣」調査 / 植民地統治 / 台湾総督府文書 / 地方志 / 歴史記述と地誌記述 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2(2020)年度は昨年度末より世界に拡大した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により、海外渡航はもとより日本国内での自治体をまたいだ移動も困難となった。図書館・書店等の利用が再開した6月以降、研究計画の修正を念頭に領台前後(1870年代~1910年代)に関する諸分野の著書・論文に関するエクステンシブなレビュー作業をすすめた。研究代表者はこれまで台湾史および中国史における地域社会論の文脈から同時代資料の読み解きを行ってきたが、6月以降の期間に先行研究レビューへ改めて注力し、日本史領域にも視野を広げたレビューを行ったことによって一定の収穫を得ることができた。とくに明治国家建設に伴う諸視点――国民形成のための言語政策的視点、欧/漢それぞれの「文明」に挟まれた「日本型オリエンタリズム」の視点、地方自治と植民地統治のあり方に伏在する民権論的視点――によって日本による領台初期の時期の資料をとらえる視点を得たことは大きな収穫であった。研究代表者は昨年度末から本年度夏にかけ先行研究レビューに並行して台湾各地の水利慣行に関する資料読み込みをすすめるなかで、領台初期の編纂資料に残る台湾在地の協力者によると思われる記載や、台湾総督府文書(台湾総督府公文類纂)に残る漢文報告書等の存在に着目するようになっていた。本年度の後半はこれらの資料編纂にかかわった日本側の地方官吏および台湾側の在地エリートの相互関係について、1880年代に作成された各地の「采訪冊」、領台初期に編纂された漢文地方志等の資料を読みながら整理をすすめ、その成果の一部を12月におこなわれたオンラインシンポジウムの報告に盛り込んだ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和2(2020)年2月以降、日本国内でも拡大したCOVID-19流行の影響により、海外渡航はもとより日本国内での自治体をまたいだ移動も困難となった。これに伴い、計画申請時に想定していた台湾での文献調査およびフィールド調査が今年度も実施できなかった。このため計画時に想定していたフィールド調査の研究への盛り込みを断念し、文献研究を主体にして研究目標を含めた全般的な見直しを行わざるをえなかった。ただし当初計画で想定していたフィールド調査分のエフォートをより広範な関連領域の資料と参考文献の読み込みにあてたことにより、より日/台の異なる文脈からの同時代資料の読み解きに関する知見を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3(2021)年度内の日本国外での調査(文献およびフィールド調査)の実行を断念し、文献調査へと完全に切り替える。そのうえで、元来の研究計画の目的である「清朝統治末期から日本統治初期にかけての地域社会像の把握」をめざして、「文献資料」そのものの作成過程に着目した研究整理を試みる。すなわち令和2(2020)年度中に読み進めた各地の「采訪冊」、領台初期に編纂された漢文地方志等に加えて、台湾総督府文書(台湾総督府公文類纂)の初期の慣行調査報告についてもその編纂過程に関する分析をすすめる。この資料論的な性格をもった研究をすすめ、統治者-被統治者間の関係性の一端を明らかとし、今後の研究深化へとつなげる。前記の分析の成果については年度中に改めて論文として公開する予定である。
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Causes of Carryover |
当初計画では文献資料収集およびフィールド調査のための海外(台湾)調査費用を旅費として計上していた。しかしながら令和2(2020)年度はCOVID-19の世界的流行状況がつづき、次年度(令和3(2021))においても好転の可能性は低く、また仮に海外渡航が可能となったとしても検疫隔離措置のため調査うことが可能となるとは限らない。そこで次年度については当初計画の旅費相当分を論文投稿・成果公開に必要な物品費・謝金へと振り替えて使用する。
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