2021 Fiscal Year Annual Research Report
Local Politics and Irrigation Management in Early Colonial Taiwan
Project/Area Number |
19K23103
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
前野 清太朗 東京大学, 教養学部, 特任助教 (70844819)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2022-03-31
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Keywords | 植民地社会史 / 植民地統治 / 台湾総督府文書 / 臨時臺灣舊慣調査 / 漢文訓読体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度(2021年度)も昨年度に続くCOVID-19の世界的流行のため、当初想定していた現地フィールド調査を実施することはできなかった。ただし、総督府文書等の一次資料を利用した文献的な方面からの検討については一定程度研究を進展させることができた。また昨年度以来の文献レビュー以降、日本史領域にも視野を広げた成果として、総督府文書・伊能嘉矩文書・後藤新平文書等の和文崩し字を含む一次資料群を利用した研究展開をおこなった。これらの文献的な研究展開が可能になった背景には、台湾の公的機関・図書館・大学等が整備してきたデジタルアーカイブの公共利用化(無料化)がこの2年間で大きく進展したことがある。これまで多くのデジタルアーカイブについては、部内者に利用資格が限定されている、あるいは内部ネットワークからの接続に利用が制限されているなどの制限が設けられており、デジタル化資料であるにもかかわらず現地(台湾)に直接訪問して資料調査を行わなくてはならなかった。各機関のアーカイブ運営に関する方針転換や、デジタルアーカイブ維持のための公的補助金の導入などが、如上の急激な資料利用環境の変化をもたらしたもののようである。これらの資料を利用した本年度の具体的な成果としては、統治最初期~児玉源太郎・後藤新平体制に至る総督府と台湾在地名望家(地域エリート)の関係について分析に取り組み、この期間において一種の「相互誤解」を交えた両社の協同関係が存在していたことを明らかにした。この成果は、とくに植民地行政において用いられた各種文体の「漢文」の角度から試みた分析として公表(前野2021)を行った。
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