2020 Fiscal Year Research-status Report
A shifting construct of friendly and unfriendly relations between Japan and Korea in the Early-modern era -Negating the portrayal of the "Good Neighbor era"-
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19K23106
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
李 炯周 名古屋大学, 人文学研究科, 研究員 (00844862)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2022-03-31
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Keywords | 裁判役 / 対馬藩 / 日朝関係 / 日朝交渉 / 善隣友好 / 倭館 / 河内徳左衛門 / 戸田頼母 |
Outline of Annual Research Achievements |
18世紀における裁判役の役割および位置付けについての研究を行った。当時の日朝交渉を担当していた倭館館守と裁判役を比較・分析し、18世紀日朝交渉における裁判役ならではの役割乃至は領域を明らかにすることができた。なお、18世紀日朝交渉における裁判役の位置付けについても考察した。 裁判役は対馬藩の役人でありながらも「双方順便」を推進する役割を与えられていた。これは裁判役だけに与えられたもので、裁判役は、交渉において両者の主張・利害を調整することを本来の役儀とする役職として設定されていたのである。 その一方で裁判役は倭館滞在期間に期限がなかったため、故意的長期滞留を利用することで朝鮮側にプレッシャーをかけることも可能であった。これもまた裁判役ならではの交渉手段であった。 上記した裁判役の独特な役儀もしくは交渉手段は18世紀日朝交渉において重要な意味を持つ。17世紀後期以来、いわゆる「日鮮関係における記録の時代」が開かれ、18世紀からの日朝交渉が故事先例に根拠をもつ主張によって展開されるようになったとは言え、現実的にはいつも故事先例や理屈だけで交渉が収まることはなかったからである。交渉が対馬藩の意図通りにならない場合、倭館では闌出(倭館滞在中の対馬人による不法外出・示威行動)を強行することもあった。しかし、闌出は不法行為であって、朝鮮との関係を悪化させることで他の問題を惹起するリスクが高い。従って、18世紀の対馬藩としては、交渉において両者が同時に満足できる合意点を積極的に導出するか、ときには間接的な方法で朝鮮側にプレッシャをかけ、朝鮮側の譲歩を誘導することが、最も現実的かつ有効だったと考えられる。 このような「日鮮関係における記録の時代」において例外的ではあったが、欠かせなかった部分に裁判役が従事していたと言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ事態により、積極的な史料調査が難しかった。 去年度は韓国国史編纂委員会と共同作業(史料整理)を通じ、ある程度の史料調査ができたものの、整理の対象となった史料の殆どが近世日朝通交全般に関する史料であったため、充分な史料調査ができたとは言えなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は対馬民族資料館が対馬歴史研究センターとして再開場したため、史料調査を計画している(7月)。 現在、後続研究として有田杢兵衛を中心とする17世紀前半の裁判役や後半の裁判役の比較を想定している。17世紀は裁判役の身分・在任期間・役割区分などに大きな変化が起きる時期である。現在までは史料不足で17世紀の裁判役を対象にした研究は殆どなされなかったが、入手済みの史料に加え、対馬調査(7月)で入手する史料を積極的に利用し、17世紀の裁判役について研究する予定である。
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Causes of Carryover |
2020年からのコロナ事態により史料調査が不可能だった。今年も国内内の史料調査は難しいものの、対馬歴史民族資料館が対馬歴史研究センターとして再開場したため、対馬への旅費や調査費用として使用する計画である。
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