2022 Fiscal Year Annual Research Report
The relationship between central and local authorities of the Kingdom of Hungary concerning "Gypsy" policy in the second half of the 18th century
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19K23107
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
市原 晋平 神戸大学, 人文学研究科, 助教 (50842423)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 近世史 / 18世紀 / ハンガリー / ロマ/「ジプシー」 / 中央・地方関係 / マイノリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、中央集権改革が進む18世紀のハンガリー王国全土にて展開された「ツィガーニと呼ばれた人々」(以下「ツィガーニ」)の統制や法的・社会的「同化」を意図した諸政策の遂行実態を検討し、従来対立が強調されがちな当該期中央・地方関係を、協働や調整の側面も踏まえて再構成することを目指している。なお「ツィガーニ」は「ジプシー」に相当するハンガリー語で、現在ではロマ民族への蔑称とされる傾向もあるが、当該期史料中の「ツィガーニ」概念はロマ以外をも包含しうることから、本研究では当該期を対象とする場合など、特定の条件下を念頭にこの表現を用いている。 2022年度には同年7月にブダペシュトのハンガリー国立文書館、市内の図書館などで調査を実施し、関連史料・文献を収集した。時間と予算の関係上、関連史料群の網羅的入手は叶わなかったが、「ツィガーニ」政策に関わる地方・中央間コミュニケーションの一端を解明するうえで質・量ともに問題ない程度の史料を獲得できた。また、この時の入手史料により本研究に新たな進展が見られた。具体的には、2023年3月にハンガリー学会にて研究報告「18世紀後半のハンガリー王国における「ツィガーニ」をめぐる中央・地方間コミュニケーション―1783年総督府令作成過程における王国北東部諸県からの「意見書」を中心に―」を実施し、ハンガリー王国北東端(現ウクライナ、ザカルパチア地方)諸県が1782‐83年に中央行政府ハンガリー総督府に送付した「意見書」の内容から、各県が有する「ツィガーニ」に対する「問題意識」の多様性を検討した。同「意見書」についてはほぼ全県分を入手済みであるため、今後その他の諸県の「ツィガーニ」への「問題意識」の多彩さや、それに総督府がどのように反応したかも併せて検討し、次年度を目途に論文にまとめたい。なお、その他の副次的成果は「研究発表」欄を参照のこと。
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