2019 Fiscal Year Research-status Report
植民地台湾の衛生政策における日本人産婆の関与の実態と役割
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19K23108
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
阿部 奈緒美 奈良女子大学, アジア・ジェンダー文化学研究センター, 協力研究員 (20848460)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 産婆 / 日本 / 植民地 / 台湾 / 総督府 / 衛生 / 母子保健 / 女性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、医療・衛生が有効な台湾住民懐柔策として重視された植民地期の台湾(明治28(1895)-昭和20(1945)年)において、母子保健施策に日本人産婆がどのように関わり、どのような役割を果たしたかを明らかにすることを目指している。日本の台湾統治期における母子保健衛生政策がどのようなものであったかは未整理であり、日本人産婆に関する先行研究は管見ではほぼ存在しない。また同時期の台湾での日本人女性の社会・生活史研究は、これまで十分行われきたとは言い難い。本研究の成果は、従来の男性主体の植民地台湾統治史に、女性の関与や役割というジェンダーの視点による新たな史実および知見を付加するものとなり得る。 初年度である令和元年度は、台湾の中央研究院近代史研究所客員研究員として、同研究所に令和2(2020)年2月1日から約1か月間滞在し、台湾における日本人産婆に関する史料を収集した。またこの滞在期間中、戦前期の台湾において最も長期間発行された『台湾日日新報』(明治31(1898)-昭和19(1944)年)の記事データベースを使用して、日本人産婆たちの氏名や活動状況を掘り起こした。これらの調査の結果、植民地台湾における日本人産婆の職能団体活動と衛生官吏との接点、各日本人産婆の社会貢献活動等の一端が判明している。台湾での在外研究にあたっては、本研究助成金によって購入したノートパソコンを携行し、データの収集・整理、文書作成等に活用した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和元年度は、台湾の中央研究院近代史研究所客員研究員として、同研究所に令和2(2020)年2月1日から約1か月間滞在し、台湾における日本人産婆に関する史料を収集した。初年度の滞在期間は、当初の予定(2か月間)より短いものとなったが、植民地台湾関連の史料をまとめて閲覧することができ、新聞記事を集中して調査して新たな史実を見出すなど、充実した在外研究期間を過ごすことができた。 また本助成金によって購入したノートパソコンは、軽量で携行しやすくかつ機能性が高いため、場所を選ばずに情報の収集・整理、文書作成等が実行でき、研究活動に役立てることができている。 以上の理由から、本研究はおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度には、客員研究員として台湾の中央研究院近代史研究所に2か月間以上滞在し、植民地台湾における日本人産婆の母子衛生施策への関与の具体的事例に関する原史料発掘に努める。また国内での史料の調査・収集も、必要に応じて行う。研究成果については、中央研究院近代史研究所の学術講演会で英語での口頭発表を予定しているほか、所属学会の学術集会や研究会等で口頭発表をする。また論文を執筆し、学術誌への投稿を行う。
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Causes of Carryover |
旅費については、初年度に2か月間台湾に滞在する予定であったが、スケジュールの調整がつかず、約1か月間の滞在にとどまった。また国内の史料調査は、やはりスケジュールの都合で当初の予定どおりには実施できなかった。人件費・謝金は、予定していた中国語通訳や専門知識提供者等への謝金を使用する機会がなかった。 次年度は、台湾での調査期間を当初計画していた1か月間から、2か月間余りに延長すること、同地滞在中の専門知識提供者へのインタビュー、国内での史料調査等を実施する。ただし新型コロナウイルスの感染状況に応じて、左記次年度計画は変更せざるを得ない可能性がある。在外調査が難しい場合は、国内でできる調査を鋭意実施し、研究成果を論文にまとめて学術誌等に積極的に投稿するなど、適宜対応する。
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Remarks |
「植民地台湾における日本人産婆」,研究交流会での口頭説明,中央研究院台湾史研究所(台湾),令和2(2020)年2月21日.「Progress Report(中央研究院近代史研究所での研究調査進捗状況)」,中央研究院近代史研究所(受入教員Dr. Lien)提出リポート,令和2(2020)年2月27日.
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