2019 Fiscal Year Research-status Report
列国議会同盟(IPU)と戦後日本の議員外交に関する総合的研究:国内外資料から
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19K23109
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
伊東 かおり 広島大学, 文書館, 助教 (90849902)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 列国議会同盟 / IPU / 議員外交 / 多国間外交 / 冷戦外交 / 「外国通」議員 / 日韓・日朝関係 / 政党間外交 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度9月末から10月にかけて、ジュネーヴの列国議会同盟(IPU)事務局で資料調査を行った。当該調査では本研究課題の核となる戦後の日本とIPUとの関係を解明する事務局資料、国会議員からの書簡類のほか、主にアメリカ、イギリス、ソ連、韓国、北朝鮮といった、日本が多国間議員外交を展開する上で重要な関係国の基礎資料も入手することができた。本研究では、衆議院事務局国際部や外務省外交史料館での戦後資料とIPU資料を付き合わせて研究を行う予定であったが、衆議院からは戦後資料の公開を断られ、外務省からは関係資料は所管していないとの回答を得た。そのため、今回の調査の成果が本研究全体においても重要なものになってくると考えている。なお、当該調査時にドイツのバーデン州立図書館でも関係資料の収集を試みたが、こちらでは目立った成果を上げることができなかった。今後、IPU以外の調査先を選定する際にはより絞り込んで選択する必要があると感じた。当該調査の成果をもとに、アメリカ、イギリス、韓国での調査をこれからの最優先事項としたい。 今回の調査の成果は、2020年4月に名古屋大学の近現代史研究会等で口頭発表を行う予定であったが、新型コロナウィルスの影響で延期になってしまった。そのため、原稿の執筆に注力しているところである。なお、2019年年度の国際学術セミナーおよび史学会大会近現代史部会で口頭報告を行った際、研究の展望として本調査の成果を基に戦後のIPUと議員外交について言及した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題で最重要となるジュネーヴでの戦後資料調査は、2019年度に約3週間の日程で遂行することができ、目標分の8割近くの資料を閲覧・収集することができた。日本議員団関係の資料は70年代初頭までのものはほぼ網羅できたと言ってよく、それに加え、アメリカ、イギリス、ソ連、北朝鮮、韓国の関係国の資料も半分程度は収集できた。これらの結果、日本が戦後IPUに再加盟を果たしていく経過や、その際アメリカ、イギリス、フランスなどの西側の議員団の動きが再加盟にどのような影響を及ぼしたかということが解明された。また韓国、北朝鮮の加盟をめぐるアメリカ、ソ連の行動と日本議員団の立場・活動についても、各国議員団と事務局との報告書・やりとりなどから具体的な解明を行うことができる見通しである。今後は、アメリカ、イギリス、韓国など比較的資料へアクセスが容易な関係国を中心に議会資料、外交文書等を見ていく必要がある。 一方、本研究では衆議院事務局と外務省外交史料館でも戦後の関係資料を調査する予定でいたが、前者については現在に比較的近しい文書が多く含まれていることを理由に閲覧を断られ、後者については関係資料は所管していないとの回答を得た。外交史料館については戦前のIPU資料は網羅的に所感されており、また戦後も2000年代以降は行政文書ファイル管理簿でもその存在が確認されているにもかかわらず、戦後から1990年代が脱落・欠損しているのは奇異である印象を申請者は持っており、さらに追跡調査が必要であると考えているが、こうした資料状況を1年程度で改善するのはおよそ困難であり、国内資料の収集については今後、刊行物と私文書の方に集中する必要があると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
前述のとおり、国内資料の収集に頓挫が見られたため、今後は海外資料の収集に軸を据えたいと考えているが、昨今の新型コロナウィルスの影響は、本研究課題の遂行に大きな影を落とすことは避けられないと思われる。 IPU資料はこれまで全く注目されていない資料であり、これまで収集できた分の成果を基に数本の学術論文を執筆することは可能であると考えているが、各国と日本議員団の連動性・関係性を検証するには不十分であり、一刻も早いコロナの収束が待たれる。国内資料においても、関係する資料館が閉館・閲覧謝絶・遠隔複写の差し止めを行っている現状において、一次資料を基にする研究の推進は極めて厳しい状況にあると言わざるを得ない。 現状では2019年度に収集した資料の整理・解読に力を入れるとともに、ウェブで閲覧可能な国内外の公文書・私文書や新聞資料の調査を行っている。また、申請者は朝鮮・韓国語に精通していないため、当該資料の翻訳を信頼できる研究者に依頼することにしている。IPUとともに岸信介が中心となって活動していたアジア国会議員連合(APU)が刊行していた資料・雑誌の収集も同時並行で行っており、海外調査を行わずに本研究の課題が進展できる方法を模索しているところである。
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Causes of Carryover |
3月に韓国・ソウルでの資料調査を予定していたが、新型コロナウィルスにより頓挫した。残額はアメリカ、イギリス、韓国等本研究課題の関係国への海外調査費、および韓国語資料の翻訳、国内での資料収集に充てる予定である。
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