2020 Fiscal Year Research-status Report
列国議会同盟(IPU)と戦後日本の議員外交に関する総合的研究:国内外資料から
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19K23109
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
伊東 かおり 広島大学, 文書館, 助教 (90849902)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2022-03-31
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Keywords | 議員外交 / 現代外交史 / 議会史 / 冷戦史 / 東アジア関係史 / 政党史 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで国交正常化における交渉の下地作りや、朝鮮半島での政党間外交などしか知られてこなかった戦後の日本の議員外交の展開について、(1)多国間による普遍的な議員外交を推進したIPU(列国議会同盟)と国会との関係、および(2)東(南)アジアの自由主義国との議員外交を推進したAPU(アジア国会議員連合)の活動について、主に国内の刊行物や個人資料の調査を基に、その多様な実態を明らかにした。 (1)では、衆参両院が各年発行した『列国議会同盟報告書』や新聞記事、参列者の体験記のほか、60年代にIPU評議員に就任しIPUの活動や日本との関係に重要な役割を担った福永健司の二次史料を収集、分析した。その結果、戦前期には日本議員にとっては自己の立場を一方的に主張する場に過ぎなかったIPUが、福永らの活躍によりより当該期の国際関係を意識し、国連総会などを見据えた中で日本の国際的役割を試みる「実験場」として活用されたここと、またアジアグループ創設により、IPUが東南アジアや中東諸国との議員外交のひとつの足掛かりとなったこと、60年代の池田・佐藤内閣で閣僚級のポストを務めた福永がIPUの中心を担ったことで、上記の活動が政府が展開する経済外交のもとで推進されたことなどを明らかにした。 (2)では、IPUが比較的冷戦対立に中立であったのに対し、反共産主義を標榜したAPUの活動について、APU月報や組織の中心であった岸信介の個人資料(山口県田布施町)の調査などから、APUの東南アジアへの経済支援や文化交流など幅広い活動を明らかにするとともに、特に千葉三郎らを中心に、APUが1970年代の日韓議員連盟創設に重要な役割を担った点を解明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウイルスの世界的蔓延により、研究の核となるはずだったヨーロッパ、アメリカ、韓国での海外史料調査がまったくできなかったばかりか、国内の調査も研究者が居住する中国地方とその周辺に限られ、長期的かつ広範囲の調査を断念せざるをえない状況となった。 特に本研究の核となるはずであった、ジュネーヴのIPU事務局や戦後IPUの議長となったイギリス上院議員スタンスゲートの個人資料が所蔵されているイギリス議会史料室をはじめとするヨーロッパでの調査や、APUの加盟国であり日韓議員連盟の当事国である韓国、日韓議員連盟の設立に関与したとされるアメリカでの史料調査ができなかった点は、痛恨の極みというほかない。また国内においても、国立国会図書館や外交史料館など基本的な機関での調査が充分に遂行できなかったほか、APU創設の中心メンバーであった千葉三郎の個人資料(千葉県茂原市)の調査ができなかった点も悔やまれる。岸信介の関係史料(山口県田布施町)の調査も完了することができず、終始コロナに振り回された年度であった。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の今後の遂行は、とりわけ海外調査についてはひとえにコロナの終息を待つしかないと言わざるをえない。コロナの終息や海外渡航の見通しがつかない状況が続く場合は、研究テーマを大幅に変更することも検討している。変更を余儀なくされた場合は、戦前期にIPUなどの国際機関・団体と関係を結び、独自の国際ネットワークを形成した議員や、日系移民と関係を深くし移民政策等に精通した議員など、いわゆる「外国通」と呼ばれた議員に焦点を当て、研究を掘り下げるつもりである。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により、国内外での史料調査が充分に遂行できなかったため使用額が生じた。今年度は、コロナの感染状況が収まれば国内外の調査を再開したいと考えているが、現在の状態が続く場合は、国会や議員が発行した報告書やパンフレット、旅行記などの文献資料や新聞資料等の収集・検討を行ったり、各機関のデジタルアーカイヴズ等で公開されている資料の分析を行うことで、研究を遂行したいと考えている。
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