2022 Fiscal Year Annual Research Report
列国議会同盟(IPU)と戦後日本の議員外交に関する総合的研究:国内外資料から
Project/Area Number |
19K23109
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
伊東 かおり 広島大学, 文書館, 助教 (90849902)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 議員外交 / 万国議院商事会議 / 列国議会同盟 / 貴族院 / 議会事務局 / 憲政資料(参議院所蔵) / 衆議院 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、参議院事務局に所蔵されている貴族院事務局関連資料(以下「憲政資料」)の調査を重点的に行った。「憲政資料」は参議院事務局が近年整備を進めており、今年度に入って申請者も調査を行う機会を得た。その結果「憲政資料」の中に万国議院商事会議(Commercial Conference of the Inter-Paliamentary Committee、以下「商事会議」)に関する資料が充実して含まれていることを確認した。 「商事会議」は現存しておらず、これまで外務省が所蔵する「外務省記録」のほかは国内外でまとまった資料を発見できていなかった。今回「商事会議」の事務局と日本の議会事務局の基礎的なやり取りを示す資料を確認できたことは、貴族院の多国間議員外交の実態のみならず、「商事会議」自体の基本的な活動内容を解明するうえでも画期的なことであった。これらの資料をもとに、当初IPUへの加盟や議員の外交活動に否定的だった貴族院が「商事会議」に積極的に参加した理由と経緯を明らかにできた。これは「商事会議」のみならずIPUに対する貴族院の認識を知るうえでも極めて重要であり、IPU―衆議院、「商事会議」―貴族院の構図で運営された帝国議会の多国間議員外交について理解が促進された。 研究期間全体では、コロナ禍により当初予定してた国外での積極的な資料収集は十分にできないままとなったが、、国内の調査を充実させたことで、戦後の日本議員の議員外交への認識や活動の様相を考究することができた。これらの研究をもとに戦前・戦後の日本の議員外交の連続性・非連続性について検討を行い、その成果として単著『議員外交の世紀』を執筆することができた。また「憲政資料」中に商事会議の新規資料を確認できたことで、貴族院の議員外交や、戦後につながる議員外交と経済外交との連関性を検討するための基礎的な研究成果を挙げることができた。
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