2020 Fiscal Year Annual Research Report
人的ネットワークの構造からみる平安時代の社会変容―中央と地方の関係に注目して―
Project/Area Number |
19K23111
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
手嶋 大侑 名古屋市立大学, 大学院人間文化研究科, 研究員 (20843147)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 年官 / 院政期 / 人的ネットワーク / 『除目申文之抄』『九抄』 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題期間中に発生した新型コロナウイルスの影響により、当初予定していた計画(フィールドワークなど)を実施することが困難となった。そのため、当初計画の内容を一部変更して(フィールドワークを史料翻刻に変更した)、研究を進めた。 2019年度の研究では、宮内庁書陵部図書寮文庫所蔵『除目申文之抄』が、従来逸書とされてきた藤原伊通の除目書『九抄』の一部の写本であることを明らかにした(再投稿中)。2020年度は、この成果が近年研究が活発になっている中世の公事・除目研究に資するものになることを鑑み、同史料の全文翻刻に取り組んだ。ただし、翻刻作業は、コロナ禍を受けて急遽はじめたものであったため、本研究課題期間中に全文翻刻を終えることはできなかった。この作業については、今後も継続して実施し、終了後は紀要等で公開する予定である。 また2020年度には、当初の計画通り、院政期の人的ネットワークに関する研究も進めた。本研究では年官史料および地域社会史料を丁寧に分析、読み解くことによって、摂関期~院政期における年官の運用および地域社会の動向に関して理解を深めることができ、その成果として、11世紀後半頃から、平安中期において中央と地方の人的ネットワークを支えていた年官の機能が形骸化することを明らかにできた(第4回古代地域社会史研究会で発表)。 この成果により、院政期における中央と地方の関係性の変化や年官の歴史的意義の解明に大きく近づくことができたと考える。その一方で、本研究課題で明らかにした11世紀後半における変化の社会的背景は何なのか(中世荘園制成立との関わり)など、新たな課題も見えてきた。今後は本研究課題の成果を踏まえて、研究を進めていきたい。
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