2020 Fiscal Year Research-status Report
検注帳編年目録データベースの構築による荘園制研究の転回
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19K23114
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Research Institution | Beppu University |
Principal Investigator |
赤松 秀亮 別府大学, 文学部, 講師 (30844120)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2022-03-31
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Keywords | 日本中世史 / 荘園制 / 検注 / データベース / 現地調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、検注帳の悉皆的収集・総合的分析を通して、荘園や公領の領主が現地の把握を行う検注という視角から荘園制、ひいては中世社会を捉えなおすことを目的とする。以下、2020年度における研究成果の概略をまとめたい。 (1)検注帳および関係史料の収集:2019年度に引きつづき、検注帳および関係史料を収集し、編年目録データベースの作成を進めた。具体的な作業方針は、以下の2点である。 ①『鎌倉遺文』所収文書の収集:鎌倉期の史料が網羅的に収載されている『鎌倉遺文』から検注関係史料の抽出を行った。 ②『大日本古文書』所収文書の収集:『大日本古文書』家わけ文書(醍醐寺文書・大徳寺文書)から検注関係史料の収集を行った。本作業は、荘園領主や荘園ごとに異なる検注関係史料の形態を探るために実施したものである。従来の検注研究では必ずしも検討されてこなかった文書群から関係史料を収集することで、検注の多様なあり方がより明確となった。 (2)コロナ禍における新たな現地調査の構想:本研究の申請段階では、美濃国大井荘などを事例に、現地調査を交えたケーススタディの実施を計画していた。他方、新型コロナウイルスの世界的流行は依然継続しており、予定していた現地調査・研究を行うことが困難な状況となった。そのため、研究代表者の所属機関に近接する大分県内の荘園・村落遺跡(豊後国田染荘ほか)へと調査対象を移行した。その際、従来からの調査方法のうち現地における聞き取りなどは、パンデミック流行下での調査方法としては適さないことから、数度の予備調査を経て、新たな調査方法を検討・模索した。具体的には、自然地理学の研究者との協業による地形・地質の分析を重点的に進めることとし、次年度の具体的な調査方針を策定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルスの世界的流行により、史料調査や荘園故地での現地調査に大きな制約が生じ、とくに後者では調査対象の変更を余儀なくされた。しかしながら、前者については既刊の史料集からの地道な史料収集を進めることで一定の成果が得られた。また、後者についても従来の調査手法を見直す機会となり、GISを始めとした先端機器の活用により、パンデミック下での調査スタイルについて一定の見通しが得られ、次年度の成果が期待される。以上の理由から、本研究はおおむね順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度・2020年度に引き続き、編年目録データベースの作成を行う。また、大分県内荘園・村落遺跡での現地調査を本格化し、分析作業を行う。なお、2021年度は本研究の最終年度となるため、研究の総括に向けた史料の分析・検討を進める。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの世界的流行により、予定していた現地調査が実施できなくなり、旅費や、調査した史料のデジタル化費用を支出できなかったことがその大きな理由である。支出できなかった分については、検注関連史料を収集するうえでの謝金および、現地調査に用いる機器に支出し、計画的な執行に努めたものの、一部予算を2021年度に持ち越すこととなった。次年度予算は、検注関係史料収集の謝金に充てることを予定している。
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Research Products
(2 results)