2020 Fiscal Year Annual Research Report
エジプト中王国時代における装身具のカテゴリと葬送儀礼行為の研究
Project/Area Number |
19K23115
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
山崎 世理愛 早稲田大学, 文学学術院, 助手 (50844164)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 古代エジプト / 中王国時代 / 装身具 / 供物儀礼 / 器物奉献儀礼 / 葬送儀礼 / オブジェクト・フリーズ / 副葬品 |
Outline of Annual Research Achievements |
エジプト中王国時代の木棺に描かれたオブジェクト・フリーズと呼ばれる装飾帯について、昨年度に引き続きそこに表された器物の図像表現や文字ラベルをデータベース化し分析を進めた。昨年度はごく一部のみのデータベース化に留まったが、当該年度は対象とする描写器物全てを1点1点同定し文字ラベル内容を判読することができた。その結果、83点の木棺上のオブジェクト・フリーズに描かれた1,973点の器物が資料化された。その中でも装身具は特に頻繁に示される器物であり、個別検討に加え同一木棺上の組成についても分析を行うことで、理想的な奉献装身具の内容を復元した。たとえば、装身具の種類によって描写頻度が大きく異なることや、棺内の被葬者を重層的に奉献器物で取り囲む描写がされていることが分かった。 さらに当該年度は、実際の考古資料との比較も行なった。その結果、まずオブジェクト・フリーズにおける描写傾向とは逆の出土傾向が看取された。襟飾りなどオブジェクト・フリーズに必須品目として描かれた装身具の主要セットは実際にはほとんど出土せず、むしろ描写頻度の低かった装身具が一般的なものとして位置付けられたのである。ある程度の自由が存在した中王国時代社会であるが、儀礼に用いられるような特定の器物に関してはそうではなかった可能性が挙げられる。そのような中、王族など例外的な埋葬では襟飾りを含む主要セットが副葬され、その組成はオブジェクト・フリーズと類似していた。またそれらは反復的に配置されており、儀礼の繰り返しが重要視されている様子が窺えた。しかし、儀礼執行のタイミングは、ミイラとともに墓へ運ぶことが示されている壁画に描かれた典礼とは異なっていた。理想に近い器物が捧げられても、やはり現実に合わせた創意工夫の上で実際の葬送儀礼が行われていたということが判明した。 なお、成果の一部は当該年度に提出した博士論文に含めた。
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Research Products
(1 results)