2020 Fiscal Year Research-status Report
Identity reconstruction using archaeological heritage through public archeology in migrant societies.
Project/Area Number |
19K23119
|
Research Institution | Kyoto University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
古手川 博一 京都外国語大学, 京都外国語大学ラテンアメリカ研究所, 客員研究員 (30852371)
|
Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2022-03-31
|
Keywords | インターネット / バーチャル展覧会 / ジグソーパズル / SNS / ボードゲーム / 小冊子 / 空撮 / 三次元デジタルデータ |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、現地に赴き発掘調査を実施してデータ補充を行い、その成果を利用して村人に対する考古学や遺跡に関する知識を普及し、それを元にした新たなアイデンティティ形成過程を観察および考察する予定であったが、新型コロナウイルスによる世界規模のパンデミックの影響で、予定していた様々な活動の変更を余儀なくされた。初めに変更した点は発掘調査を中止し、これまでに蓄積してきた調査成果を利用して普及活動を準備することである。普及活動も非接触環境であるインターネットを利用した活動を中心にする様に変更した。以前実施した写真展のデータを使ってバーチャル展覧会の会場作りを開始し、現在ではもう少しで一般公開できる状態まで完成している。また、これまでの調査で撮影した様々な写真を利用してインターネット上でジグソーパズルを約130点作成し、6月から12月の間にSNSを利用して拡散した。その際には、遺跡や考古学に関わる様々なトピックを一緒に普及することに努めた。インターネット以外には、メキシコで一般的なボードゲームを遺跡や考古学に関連付けて作成し、村の各家庭に送付した。また、村にある遺跡や周辺遺跡、そして考古学全般に関する簡単な内容の冊子を村が所属する市役所の協力を得て作成し、各家庭に配ることもできた。このような活動が実際にアイデンティティ形成にどの程度の効果を発揮しているのかを明らかにするために、インターネットを通じたアンケート調査を準備したが、実際には村人たちがインターネットへの十分なアクセス環境を持っていない事が判明し、2021年1月には実際に村に赴き、アンケート調査を実施することになった。その際には村人に対するこれまでの調査で分かっている事に関して講演も行い、今後の普及活動のためにドローンを使った動画や写真の空撮を行い、村に保存されている古代の石彫の三次元データ作成の写真撮影も行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
一番大きな原因は、新型コロナウイルスの世界規模のパンデミックによって、渡航が不可能になった点である。幸い、昨年末には困難さが残るながらも、辛うじて渡航する事が可能になったが、まだ、以前の様に簡単にメキシコに渡航し、メキシコ国内を自由に移動する事ができる様にはなっていなかった。また、当初予定していた活動が室内での講演会や参加型のイベントなどパンデミック回避の行動と矛盾するものなので、大幅な変更を余儀なくされた。また、パンデミック回避の為にもっとも有効な手段であると考えられるインターネット空間の利用が、対象地の村の生活環境と一致しておらず、利用がかなり困難である事がわかってきた。つまり、都市部とは異なりインターネットの回線が届いていない為に、携帯電話の電波を使ってスマートフォンに接続してインターネットを利用することになるが、使用料金が固定型のインターネット回線と比べると高額になり、そもそもスマートフォンを所有している住民が少ない。そのため、様々な変更事項も再変更する必要が生じ、大きな遅れを引き起こす原因となった。
|
Strategy for Future Research Activity |
村人の大多数が移民である村で、彼らが現在生活を営んでいる考古遺跡やそれに関わる考古学的な知識を得る事によって、新たなアイデンティティの形成を図るにはまだ普及する情報が不足しているので、現在準備が終わりつつあるバーチャル展覧会の開催、および配布済みの遺跡と考古学をテーマにしたボードゲームを利用したインターネット上のイベントなどを開催して最後の普及活動を行う。その後、一定期間を置いたのちに、村人たちにアンケートを実施し、前回のアンケートからどの様な変化が読み取れるのか、それが新たなアイデンティティ形成にどの様に関わっているのかを考察する。その際には、研究代表者自身が渡航してアンケート調査を実施するのはまだ難しいと考えられるので、メキシコ人の協力者に実行してもらう事になる。研究代表者はその結果を分析し、最終的な報告書の作成に取り掛かり、同時に学会等での研究発表や雑誌論文出版のための準備を進める事になる。学会発表は2022年のアメリカ考古学学会年次大会を予定しているが、機会があれば、日本の学会である「古代アメリカ学会」の総会などでの発表も考えている。論文発表の場は、研究代表者が所属している京都外国語大学ラテンアメリカ研究所の紀要やメキシコなどのデジタル雑誌への投稿を予定している。幸い、次年度への研究期間の延長が認められたので、当初予定していた研究と同等の調査を実施し、必要な結果を手にすることは可能であると考えられる。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの世界規模のパンデミックにより、研究方法の変更が生じ研究に遅れが生じた。調査を継続延長するにあたり、次年度使用額の使用目的の大半は現地協力者への給与となる予定であるが、先述の活動計画のための交通費や必要物品等の購入費にも充てる予定である。
|
Remarks |
Instituto Veracruzano de la Cultiura主催のHablemos de Arqueologiaというプログラムで録画され公開されているビデオ。プロジェクトの経過と現在実施している調査についての一般向けインタビュー。
|