2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K23123
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Research Institution | Ube National College of Technology |
Principal Investigator |
菊池 達也 宇部工業高等専門学校, 一般科, 講師 (60845709)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 日本古代史 / 隼人 / 律令国家 / 周縁 / 官人 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本列島周縁領域に対する支配拡大を目指す律令政府が、8世紀代に取り組んでいた非軍事的政策の一端を解明するため、南九州特有の姓を持つ都で活動していた中・下級官人を検証するものである。本年度は、以下の2つの検証を行った。 1)大隅忌寸公足の活動の検証 大隅忌寸公足は、天平勝宝7歳(755年)~宝亀4(773)年前後に都で活動していた官人である。左大舎人、信部史生、図書少属、図書大属といった官職を歴任するとともに、多くの写経・勘経事業にも携わっていた。この公足については、管見の限り90件、その名を史料上で確認できながらも、従来の研究ではほとんど取り上げられることがなかった。そこで本研究では、公足の活動内容に変化が見られる4つの時期に区分して、その具体的様相を明らかにした。この研究成果は、論文「大隅忌寸公足の活動の基礎的考察」として公表した。 2)古代南九州から出仕した中央下級官人の検証 律令制度の浸透が遅れていたとされる南九州からは、すでに8世紀前半の段階で、中央へ出仕していた者が存在したことが知られている。そして彼らのうち、とくに舎人に任命されていた者が、中央でトレーニングを受け、のちに郡司として南九州へ戻り、律令制を浸透させる役割を担っていたと考えられてきた。しかし、この理解は十分に論証され尽くしているとは言いがたく問題点もある。またそもそも南九州から出仕した中央下級官人の分析自体が十分になされていない。そこで本研究では、8世紀前半における南九州から出仕した中央下級官人の実態を、とくに周防国正税帳に登場する大隅直坂麻呂と薩麻君国益の事例から検証し、そのうえで彼らの歴史的役割を律令国家の南九州支配のなかで位置づけ直した。この研究成果は論文掲載を目指し、現在まとめているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究で検証する南九州特有の姓を持つ都で活動していた中・下級官人は、大隅直坂麻呂、薩麻君国益、大隅忌寸公足、大隅忌寸三行の4人である。当初の予定では、初年度までに公足の分析を完了し、最終年度にその結果を論文投稿するとともに、他の3人の分析を行おうと考えていた。しかし予定より順調に研究が進み、公足については雑誌論文に掲載された。また坂麻呂と国益についても分析を終え、その結果を言及しようとする古代南九州から出仕した中央下級官人に関する論文を、現在執筆している最中である。さらに三行については、論文執筆段階にはいたっていないものの、すでに分析を終えている。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは当初の計画にしたがって、現在執筆中の論文を完成させたい。また分析を終えている三行についても、公足との比較を通じて、畿内隼人との関連のなかで研究を深化させることができるのではないかと考えている。 さらに、本研究を進めていくなかで、派生して南九州特有の姓を持つ現地の官人の検証の重要性も感じており、計画を変更して彼らの検証を進める可能性もある。
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Research Products
(3 results)