2021 Fiscal Year Annual Research Report
イタリアにおける移民のための精神保健:「他者」との出会いの民族誌的研究
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19K23133
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
彌吉 惠子 大阪大学, グローバルイニシアティブ機構, 招へい研究員 (30846027)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2022-03-31
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Keywords | 他者性 / 移民 / 移住・移動 / 包摂 / イタリアの精神保健 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度は、昨年度までに得られた現地調査と文献調査の結果と、9月にイタリアの心理士たちと開催した、移民を対象とした精神保健と通信技術をテーマとしたオンライン研究会での議論をふまえ、イタリアで移民に対して適切な精神保健サービスの提供を試みる治療者らが、移民の他者性の取り扱いに関してどのような省察を行なっているのかという点に着目し、研究を進めた。診断や治療の場面で、特に注意を払わなければならないとされている移民の他者性とは、誰にとっても当たり前のこととみなされ看過されやすいもののほか、移民の出身地の治療体系に代表されるような解釈が困難なもの、移住・移動の経験のように移民にとって両義的なものが挙げられる。イタリアの治療者たちは、移民と出会う時、そうした移民の他者性の適切な解釈や配慮を図るため、面談に文化的仲介者などの第三者を介入させ、移民の出身地の治療体系を含む複数の理論をできる限り相補的に用いようとしている、ということが明らかにできた。 研究成果は博士論文としてまとめたほか、多文化精神医学会の学会誌「こころと文化」Vol.20 no.2への投稿論文、および2021年11月にユカタンで開催されたIUAES Inter-Congressでの口頭発表をとおしても公表した。また、2020年度からは、本研究の成果を土台として、サガラ学院所属の臨床心理士レベッカ・ファルージ氏とともに、新型コロナウイルス感染症の感染拡大・蔓延期における移住・移動の経験に着目した共同研究を開始した。
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