2023 Fiscal Year Annual Research Report
Damage and management of geoheritage due to earthquake disaster
Project/Area Number |
19K23134
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Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
目代 邦康 東北学院大学, 地域総合学部, 准教授 (80396605)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2024-03-31
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Keywords | 地形・地質遺産 / 斜面変動 / 地殻変動 / ジオコンサベーション / 自然保護 / 自然災害 / 地すべり地形 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,2022年度に引き続き,宮城県栗原市において地すべり地形や渓谷の地形について調査を行った.保護,保全の対象となっている地形は,それが形態として残りやすいものであることが重要であるため,特徴的な地形が残存する条件について調査を行った. 栗原市花山地区で,地形陰影図等で顕著に判別できる地すべり地形の地形・地質を調査したところ,ほぼ水平な地層が存在することでラテラルスプレッディングが発生していることが判明した.また,渓谷周辺にはいくつものマスムーブメントに起因する地形が存在するが,地すべり以外では,現在の外観は,一般的な山地斜面であり,保護・保全の対象にはなりにくいことが認識できた.これまで,地すべり地形の研究は,地すべりの発生メカニズムやその対策といった観点で進められていたため,それを保護の対象とする場合に,どのような状態のものが対象となるのかは議論されることはなかった.本研究の成果として,純粋な地形学的な知見と,保護・保全の対象となりうる地形の評価とは差異があることが明らかとなった.応用地形学の一分野として,保全地形学分野の確立,体系化が必要であり,また,保全生態学との比較も必要である. 2024年1月には,能登半島地震が発生し,新たに,そこで出現した地表変状の痕跡についても,その保全が可能か否かを判断するため,現地調査を開始している. 全体の研究成果をまとめると,1)地震時に発生した斜面の変状は,地球科学的価値があったとしても,人間の生活圏内のものであれば,復興の過程で消失してしまう.2)何を保護するのかが社会全体で共有されていないので,今後その議論が必要.以上の2点である.それを踏まえると,日本列島における地形学的に評価される自然遺産の保護・保全の意義は,生物多様性の基盤であるということとともに,自然災害の痕跡の可視化であるといえる.
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