2021 Fiscal Year Annual Research Report
現代中国の「代耕農」現象にみる移動のハビトゥスの民族誌的研究
Project/Area Number |
19K23135
|
Research Institution | Edogawa University |
Principal Investigator |
川瀬 由高 江戸川大学, 社会学部, 講師 (60845543)
|
Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2022-03-31
|
Keywords | 非集団論 / 差序格局 / 非境界的世界 / 移動 / ハビトゥス / 代耕農 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、中国江南地域の農村において見られる「代耕農」と呼ばれる出稼ぎ農業従事者らの生存戦略についての研究を、「移動のハビトゥス」という新たな視点から展開するものである。 中国の農村地帯は現在、相次ぐ工場建設や若者の流出、高齢化の進展に起因する、農業従事者の構造変化という新たな局面を迎えている。それを端的に象徴するのが、「代耕農」、即ち外地から流入してきた農業従事者の存在である。本研究では、「代耕農」に関する現地調査を通して、中国沿海部地域の現在を端的に象徴する「よそ者」に依存した農村の存立形態について明らかにするとともに、かれら「よそ者」らの一種の生存戦略として見なしうる頻繁かつ柔軟な移動実践を「移動のハビトゥス」と概念化し記述することにより、中国の社会的動力の一端を通時的/共時的位相において探究することを目指す。 上記の研究目標のため、本研究では中国大陸での現地調査を行う予定であったが、2020年度、2021年度ともに、新型コロナウイルス感染症の影響のため、フィールドワークの実施はかなわなかった。そこで本研究では、文献研究を主軸とした研究を進めることで、中国に見られる、軽やかに展開される柔軟な移動実践と他者との邂逅を論じるための理論的枠組みの構築に取り組んだ。これまでの調査データの再整理や、古典的先行研究の再検討の過程からは、「非集団論」と概括することが可能な研究群を再発見するとともに、高い流動性を誇る今日の社会状況における対他関係をハビトゥスの視点から考察するための手がかりを得ることができた。 最終年度では、中国民族誌学上の非集団論に関する小論の刊行を果たしたほか、新たな共同研究として古典的民族誌の刊行プロジェクトを展開する契機を得た。
|