2019 Fiscal Year Research-status Report
Narratives of religious exclusivism produced and shared through social medias in Muslim Southeast Asia
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19K23137
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
塩崎 裕子 (久志本裕子) 上智大学, 総合グローバル学部, 准教授 (70834349)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | ムスリム / ソーシャルメディア / 排他的言説 / マレーシア / インドネシア |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、年度末に予定していた現地調査が実施できなかったため、文献調査と日本国内で実施したインタビュー、ソーシャルメディア上の言説の収集が主な作業となった。まず、文献についてはマレーシア、インドネシアの二か国におけるイスラームとメディア利用に関係する先行研究を集め、インターネットを介したコミュニケーションがイスラーム知識伝達において重要性を持ってきていることを確認した。この傾向は1990年代のインターネット導入初期からすでに見えることが先行研究で指摘されているが(Hefner 2003ほか)、2012年ごろからのスマートフォンの普及によってソーシャルメディアが従来のモスクでの講義などに急速にとってかわってきており、モスクなどでは政府の規制などによりはばかられるような排他的な言説が目立つようになった。今年度は、この状況を具体的なデータから明らかにするとともに、どのような人々がソーシャルメディアで強い発言力を持つのかをマッピングすることを目標として、マレーシア、インドネシアでフェイスブック、ユーチューブ、インスタグラムにおいてイスラームの思想と実践に関連する内容を中心に投稿し、フォロワー数を伸ばしている人々にどのような種類の人がいるのかを調査した。この結果、インドネシアでもマレーシアでも、イスラームに関連する発言力が圧倒的に目立つのはどの種類のイスラーム知識を持つ人(ウラマー)よりも、「セレブリティ」といえる人々であることが分かった。一方、イスラーム知識を持つ人のカテゴリーで広く発言力を持つのは必ずしも一定のタイプのウラマーではなく、伝統的教育を受けた人々から近代的教育を受けた人々まで幅広いが、大学で教えるような人々は圧倒的に少なく、伝統的教育を受けた人が多いことが分かる。次年度はこのマッピングを充実させたうえで現地調査を実施する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
年度末に予定していた現地調査が実施できなかったので、予定ではソーシャルメディアの言説を分析したうえで現地の人々がそうした言説に対してどのように考え、ネット上の言説が現実にどのように影響しているのかにまで調査を進めることになっていたが、ソーシャルメディア上の言説の実態についてネット上で調査をする作業までしか実施できなかった。今後も調査の再開には時間がかかりそうなので、「今後の研究の推進方策」に記載した通り研究計画を若干変更したい。
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Strategy for Future Research Activity |
今後現地調査が当面実施できない状況になることも視野に入れ、代替の研究計画案を以下のように考える。 1)インターネット上の情報収集、分析について、メディアの分析に実績を持つ現地の研究協力者を得て研究を進める。 特に、ディスコースアナリシスの経験を持つマレーシア人の研究者に協力を求め、当初の研究計画よりも、文化人類学、地域研究のアプローチの一つとしてメディアの分析を取り入れるための研究方法の開発に力を入れる。 2)東南アジアのムスリム自身が長期にわたる自粛などにより、これまで以上にオンラインでのコミュニケーションの重要性が高まっていることを踏まえて、ソーシャルメディアの役割の変化を考察に組み込む。また、この点を踏まえてオンラインでのインタビューを調査手法に取り入れる。 3)オンラインでのインタビューをメインにしていく場合、これまでにすでに交流のある相手とのコミュニケーションが現実的であることから、調査を予定していた地域を若干変更して、地域的な限定よりも人脈的に対象を限定していくことになる。また、日本に滞在するマレーシア人、インドネシア人もまた、ソーシャルメディアでのつながりがイスラーム知識伝達の主要な部分を占める集団であるので、インフォーマントとして積極的に取り込んでいきたい。
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Causes of Carryover |
コロナウィルス感染症拡大の影響で年度末に予定していた現地調査が実施できなかったため、余剰が生じた。現地研究協力者と協力して渡航をせずに調査を実施することで対応したい。
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