2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K23145
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Research Institution | Museum of Natural and Environmental History, Shizuoka |
Principal Investigator |
山川 志典 ふじのくに地球環境史ミュージアム, 学芸課, 研究員 (20847040)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 民具 / 文化遺産 / 文化財保護 / 有形民俗文化財 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、文献資料収集ならびに実地見学を中心に取り組んだ。 文献は、民具学、民俗学、文化人類学、考古学といった従来「民具」を研究対象としてきた分野における研究書、図録、研究論文を中心に収集した。また、文化資源学や物質文化論等、従来の民具研究に近接しながらあまり接点が保たれていなかった学問領域における物質資料の扱いや調査方法についても、文献資料を収集し概要把握に務めた。加えて、文化財・文化遺産活用の観点から、文化遺産学や文化財保護政策論に関する資料も適宜収集・整理した。文献資料より得た内容については、地域における伝承に関連する文化遺産が現在どのように扱われ、今後継承され得るのかについて考察した、山川志典「地域の伝承に関連する文化遺産保護の新展開―研究動向と富士山麓での展望―」(ふじのくに地球環境史ミュージアム・静岡県富士山世界遺産センター編『環境考古学と富士山』第4号、2020年3月、雄山閣)において、研究成果の一部として報告した。 実地調査では、国立民族学博物館(大阪府吹田市)、国立科学博物館(東京都台東区)、飛騨みやがわ考古民俗館(岐阜県飛騨市)における展示や資料収集状況を見学すると共に、担当者や関係する研究者から、収蔵・展示の現状や今後の活用状況についてヒアリングを行った。 行政の規模や博物館毎のコンセプト等による違いをふまえ、収集・収蔵(保管)・展示という一連の流れのなかで民具資料がどのように扱われ、継承されているのか(あるいはいく可能性があるのか)を整理検討することで、今後の活用について考察を試みたい。 また、日本民具学会第44回大会(2019年11月9日、桜美林大学)、日本遺跡学会シンポジウム「国土をめぐる記憶の継承」(2019年11月16日、東京国立博物館)に参加し、発表報告の視聴や参加者との意見交換を通じ、研究内容の深化に務めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で設定した2つの論点のうち、「論点1 民具研究における民具の活用についての見解 」については、文献資料調査を進める計画であった。現在のところ、関連する文献資料の把握・収集を行い、必要とする資料について概ね収集ができた。 「論点2 有形民俗文化財における活用の見解と活用事例」については、文献資料調査とともに、保存・活用されている民具ならびに管理する博物館を対象とした、展示・収蔵状況に関する視察や聞き取り調査による状況把握を行うことを予定していた。論点2についても文献資料の把握・収集については、概ね当初の計画通りに実行できた。民具を収蔵する博物館や自治体を対象とした調査については、対象抽出作業をしながら実施し、ほぼ想定通りの訪問調査が実現した。 しかしながら、2020年2月から3月にかけて、調査予定であった博物館が、新型コロナウイルス感染症の拡大ならびにその対策のために臨時休館となる等、年度当初計画していた調査を完遂することはできなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度に収集した文献資料について、引き続き整理・分析調査を行う。博物館刊行物等一部未入手の文献があるため、適切な収集を急ぎたい。 文献資料調査と並行しつつ、博物館や自治体における民具の保存・活用状況の把握のための実地調査を進める予定である。 しかしながら、新型コロナウイルス感染症の拡大ならびにその防止策として、今後予定していた調査先の博物館や図書館において、閉館や規模を縮小した施設利用が見込まれる。また、参加や報告を予定していた学研究会の開催や学術雑誌の刊行についても変更があるものと思われる。状況を見極めつつ、研究の推進と成果の取りまとめを行いたい。
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Causes of Carryover |
物品費としてPCやデジタルカメラ等調査機材の2019年度内の購入を計画していた。しかしながら、所属機関での実質的な購入申請期限が2019年12月であり、2019年9月の採択を受けてからの期間では、見積もり合わせや見積書の作成等の手続きができず、使用できなかった。 よって2019年度に購入予定であった機材等については、未使用額を使用し購入する予定である。 また、2020年2月から3月にかけて、調査予定であった博物館が、新型コロナウイルス感染症の拡大ならびにその対策のために臨時休館となる等、年度当初計画していた調査を実施できない状況となった。そのため、旅費に残高が発生した。こちらについては可能な限り2020年度の計画に組み込み、使用していく予定である。
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