2022 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19K23145
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
山川 志典 早稲田大学, リサーチイノベーションセンター オープンイノベーション推進部門, 次席研究員(研究院講師) (20847040)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 民具 / 文化遺産 / 文化財保護 / 有形民俗文化財 / 文化遺産の保存と活用 |
Outline of Annual Research Achievements |
「論点1 民具研究における民具の活用についての見解 」について、文献資料から主に次の2点について内容の把握を進めた。1点目は「宮本常一と生活」である。本研究ではこれまで宮本常一の民具研究や保存活動をひとつの軸として調査を進めてきた。しかし、近年の研究で指摘が顕著であるように、宮本の研究や活動は、宮本ひとりだけではなく、地域住民、学生、研究者間の関わりの中で研究活動が展開されてきた面がある。そこで、宮本自身や関係者の著作から、生活というキーワードで宮本が取り組んだ研究や活動の全体像と民具の関係性について把握した。2点目は、「現代/都市の生活用具・暮らしと物の研究の展開」についてである。1980年代以降に注目すると、同時代的な現代社会や都市生活で使われる生活用具や暮らしと物に関する調査や研究が、民具学や民俗学以外の分野でみられた。これらについて主に文献から内容を把握し、展開を整理した。それをふまえて、同時代の物を資料として捉えることの可能性と限界について検討した。 「論点2 有形民俗文化財における活用の見解と活用事例」については、各自治体や博物館の取り組み事例の収集・把握にあたった。今年度も新型コロナウイルス感染症対策として、SNS、特に動画を用いた民具の情報発信の事例が多く見られた。一方で、文化財保護や博物館運営の中長期な計画や方針を見ると、所蔵する民具の譲渡や廃棄についても記載がみられ、実際に行われる事例もみられた。ここからは、現在求められる民具の活用像や、保存のためにどのような活用が求められるのかがうかがえた。これらの研究内容をふまえ、本研究のまとめとして、今日まで民具の活用の議論ををふまえつつ、「『運動としての民具』という捉え方」と「研究資料としての民具の今後の展開」という2つの民具の活用の可能性を考察した。
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